囚われ人
ここは何処だ。
なぜ私は透明な膜で覆われている?
私は何処に向かっているのだ。
私を運ぶ者に問いたいが外がうるさい。
何かが私を覆っている膜に連続して当りはじめている。
私は攻撃をされているのか?いったい何から攻撃されているのだ。
私は何も悪いことはしていない。
ただ眠っていただけだ。助けを求めなくては。運び人に声は届くだろうか。
しかし私には言葉がない。言葉を発することが出来ない。
仕方がないので少しだけ声を発してみよう。
外では運び人が他の者と話している。
おそらくいつも夜に来るあの人だろう。
言葉を理解出来ない私には不安でしかない。
攻撃の音が強くなってきた。なす術なしだ。
不安を駆り立てられる。怖い。
まだ暗くなるのには早すぎる。
なのになぜ暗いのだ。私は夜は嫌いなのだ。
ただただ恐怖しかないのだ、夜なんて。
だが今は運び人のあの人も夜は特別優しくなる。
私が寝付くまでいつも隣にいてくれるのだ。
不安な時はいつも隣にいてくれるのだ。
なぜ今は隣に来てくれない!
轟音が聞こえる!攻撃が強まっているぞ!
運び人は外にいて無事なのか?私の声は届いているのか?
この人は何処に向かって運転しているのだ!
私を不安にさせないでくれ!もう我慢の限界だ!不安に押しつぶされそうだ!力の限り声を上げるしかない!誰でもいい!私を助けてくれ!
出来ることなら運び人のあなたに助けてもらいたい!夜に来るあの人でもいい!助けてくれ!もはや力の限り声を張り上げるしかない!それしか方法はないのだ!
「おぎゃあああああああああ、おぎゃあああああああああ」
「ゴメンねーたかしちゃん、もう少しでお家に着くからねー。ほら、やっぱり雨降ったじゃない、だから車で行ったほうがいいって言ったのよ」
「ごめんごめん、でも夢だったんだよ。ベビーカー押しながら家族で買い物しに行くのさ」
雨って赤ちゃんにとっては何なんだろう。
あのベビーカーに被せられた雨よけシートは居心地悪くならないのかな。と思って書きました。
私の勝手な想像です。世の中の全てが新鮮である赤ちゃんにとってそれは好奇心であり恐怖だと思いました。
今回はその恐怖を取り上げでみました。
すぐ終わるお話ですが一瞬でも楽しんでいただけたのなら幸いです。