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格パラ  作者: 福島崇史
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今迄も、これからも

福田 大作と水戸 修、、、因縁の2人がリングに立った。


前回敗れている大作には後がない。

只でさえリスクの高い再戦というのにルールまで相手の得意な物に合わせ、リスクを更に上乗せしている。

背水の陣と言えば聞こえは良いが、グングニルの命運を背負っているトップの行動としては軽率と言わざるを得ない。


対する水戸。

前回勝っているとは言え、心の余裕など無かった。

最初この試合のオファーを貰った時も断った程だ。

前の試合で失神・失禁してまで向かって来た大作、、、それに恐怖心を植え付けられてしまった。

2度とコイツとは闘いたく無い、、、そう思ってしまったのだ。心の中の恐怖は未だ拭えていない。

あの時の光景が甦りそうになるのを、首を振って慌てて掻き消した。


オファーを何度か断った後で大作からとある提案をされた。

その条件ならば、、、と、ようやく了承したのが今回の試合である。

その呈示された条件というのがバーリ・トゥードだったのだ。

先程、通路で大作は、このルールになった経緯を

「相手の土俵で勝ちたくなったから」と語ったが、これは嘘である。

バーリ・トゥードを嫌い、バーリ・トゥードからの撤退を宣言していた大作。そんな彼が再びバーリ・トゥード戦を闘うのは、オファーを承けてくれない水戸を引っ張り出す為の苦渋の決断だったのだ。


崇をはじめグングニルの連中に話せば、反対されるのは目に見えた。その為、当日、、、それも今の今まで内緒にしていたのだ。

いや、厳密には今でも水戸とそのセコンド、大作と崇、そしてレフリーの朝倉しか知らない事である。

今から朝倉がこの試合のルールを観客へと説明する。

それによって他の皆も知る事となるのだ。


マイクを手渡された朝倉が、リング中央で一歩前に出る。

その様子に違和感を覚えた観客が、何事かと色めき立っている。

通常、試合前にレフリーがマイクを握る事などそうは無い。

観客もスタッフも固唾を呑んでリング上を見つめていた。


「只今より水戸 修vs福田 大作についてご説明申し上げます。

この1戦は特別試合として、、、バーリ・トゥードにて行われますっ!!」


狭い会場をどよめきが包み込む。

歓声の渦巻く中、掻き消されぬ様に声のトーンを上げて朝倉が続ける。

「ルールのご説明をさせて頂きます」


すると先まで荒れ狂っていた熱が、一気に沈静化して朝倉の言葉に耳を傾け始めた。

朝倉によって語られたルールはこうだ。


・3分×5ラウンドのラウンド制


・噛みつき、引っ掻き、目突き、金的、寝技状態での肘による打撃、ロープを掴む事、以上を反則としそれ以外は全てが有効


・全ラウンド終了時には判定は行わず、延長ラウンドに突入する。延長ラウンドは時間制限を設けずロストポイント制ルールで行い、先にポイントを失った方が敗けのサドンデスルールとなる。



このルール説明を聞いた優子が、血相を変えてリング下に駆け寄って来た。

「福さん!これどういう事?知っとったん?!」


怒気も含まれているが不安の方が大きいらしく、泣きそうな顔で崇を問い詰める。


「いや、、、俺も知らんかった。さっき初めて聞かされてドヤシつけた所や、、、」

崇は伸び始めた無精髭を撫でながら眉をしかめた。


やり場の無い不安を、視線と共に大作へ投げ掛ける優子、、、

するとそれに気付いた大作、イタズラを見つかった子供の様な表情を浮かべると、その顔の前に掌を立てて詫びて見せた。


腕を組み、大きく鼻を鳴らした優子に崇が言う。

「惚れた女に2度も不様な姿を見せる奴とちゃうよ。アイツを信じようや」


諦めたように小さく頷いた優子だったが

「勿論信じてるよっ、、、今までも、これからも!」

そう言って得意気に顎を突きだした。


「へいへい、、、ごちそう様です」

下唇を突きだし崇が答えた時、水戸と大作がリング中央へと歩み寄った。

共に目線は合わせない、、、

それぞれの想いを胸に秘めた再戦が、今始まろうとしている。


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