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格パラ  作者: 福島崇史
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羽根

ファンに揉みくちゃにされながら花道を進む大作。

崇と高梨がリング下からそれを見つめている。

いつもなら押し寄せたファン達とハイタッチや握手をしながらリングに向かう大作だが、この日はそれをせずにリングだけを見つめ、笑顔すら見せずにゆっくりと歩みを進めている。

今後のグングニルの命運を左右する試合、、、

まして先鋒を務めた鈴本が敗れた今、絶対に負ける事は許されない。

彼なりに想う所があるのだろう。

そんな大作がリング下で足を止め、崇と高梨に声をかける。


「喝、、、入れてくれん?」


その表情は真剣そのもので、崇は思わず気圧された。

高梨が(どないする?)とばかりに崇を見ている。

戸惑い躊躇う2人を見て大作、、、

「頼むわ」

唸る様にそう言うと2人に丸めた背中を向けた。


(そんな事で少しでも力になるんなら、、、)

そう考え直した崇は高梨に顔を向けると

「1発かまそか!」

そう言って自分の掌に息を吐きかけた。

「せやな、かますか」

言われた高梨も同じ動きで応える。


まずは崇が

「行くど」

と声をかけ、思いきり広げた右手を大作の右肩甲骨辺りに叩きつけた!

乾いた破裂音が響くと同時に仰け反る大作。

「っくぅ~、、」

目を閉じ、歯を喰い縛っている。


「今度は俺やな」

淡々と言いながら、今度は高梨が左手で左肩甲骨辺りを張る。

「んがっ!」

呻きながら再び仰け反る大作。

そのまま数秒固まっていたが、痛みが治まると2人に向き直り感謝を口にした。

「効いたぁ~!ありがとなっ!!」

そのままリングに上がろうとした大作だったが、ふと思い出したかの様に振り向くと

「そや、、、大事な事言うの忘れとった、、、」

そう言って崇の耳元に口を寄せた。

小声で伝えられたその言葉、、、


「俺、優ちゃんと付き合う事なったわ」


(は?!それ、、、今言う事?!)

崇は愕然とした表情で大作を見つめる。

悪戯が成功した子供の様な顔を向けた大作は、そのまま何も言わずにリングへと駆け上がった。

その背中には赤く浮き上がった2人の手形が見える。

それは綺麗に外側を向いており、あたかも背に生えた天使の羽根の様に見えた。


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