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格パラ  作者: 福島崇史
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理と茶

大作の試合が近い。

第5試合のセミファイナルが大作の出番で、今リングでは第4試合が行われている。

大作はウォーミングアップも済ませ、今は長机に横たわってリラックスした様子で父親からのマッサージを受けている。

しかし崇は落ち着かない。

救急箱の中身を何度もチェックしたり、意味も無く室内を彷徨いたり、、、


「ちょっ、、、福さん、じっとしてぇな!こっちが落ち着かへんわっ!」

大作が苦笑いを浮かべる。

「ほんまやで、大ちゃんが集中出来んがな。まぁ座りぃな」

そう言って高梨がパイプ椅子を差し出した。


(確かに、、、)

セコンドとして、試合前の選手の気を散らしたのは宜しくない。

言われた崇は素直に応じて腰を下ろした。

しかし心はざわついたままである。

逆に大作や高梨が何故そんなに落ち着いていられるのか、理解に苦しむ程だった。


相手はあの水戸修である。

前回 目にした彼の試合は、秒殺での勝利だった為に何の参考にもならない。

仮にもグラップスのトップクラスである。どれ程の技術を持っているのか、、、

それが分からない以上、下手なアドバイスは逆に危険な気がして余計に苛立ちは募る。

崇は色々と考えを巡らせてはみたが、結局それがまとまる事は無かった。


控室の扉が開き、グラップスの若手選手が顔だけで入室する。

「そろそろスタンバイお願いします」

その言葉だけを残し、直ぐに扉は閉じられた。

「よっしゃ!行こかっ!!」

長机から降り立った大作は、遊園地にでも出掛ける様で楽しそうに見える。

そんな様子を見ると、崇は色々考えていた自分が馬鹿馬鹿しくなり

「無理はすんなよ」

その一言だけを伝えた。


「ん?無理すんのも格闘家のお仕事やんかっ!」

ニカッと笑いながら答えた大作。

そして控室の扉を開きながら、こう付け足した。

「無理はするけど、無茶はせんから」

そのまま振り返りもせず出て行く。

その背中を見送りながら、今の台詞を頭の中で復唱する崇。

するとほんの少し気分が楽になった気がした。

選手にリラックスさせられるセコンド、、、立場が逆である。

気が楽になった代わりに、僅かばかりの情けなさが込み上げた。


花道の袖でスタンバっている大作。

その横を抜け、一足先にリングに向かう崇と高梨。

崇は一瞬大作を見たが、大作は真っ直ぐにリングだけを見つめており目が合う事は無かった。

2人はリング下に着くと大作の為の準備を始める。

そしてそれを終えると同時に、第4試合終了を告げるゴングが鳴った。

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