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格パラ  作者: 福島崇史
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控室にて。

控室に待機していた大作の父親が、とりあえずの処置として鈴本の外れた肩を入れる。

「ボグッ」

その場に居た誰もが鈍い音を耳にした。

尾を引く痛みに顔をしかめて堪える鈴本。


「肩は入れたけど靭帯にダメージがあると思うから、このまま病院行って下さいね」

相変わらずの柔らかい物腰で大作父が言う。

鈴本は無言で頷くと、立ち上がりそそくさと着替え始めた。

しかし左腕が痛むらしく上手くいかない、、、

それを見かねた高梨が手伝っている。


「病院、付き添おか?」

崇が声をかけると


「いや俺が行くから、福さんは他の連中のセコンドに付いてやって」

そう高梨が答えた。


しかし鈴本は首を振ると

「1人で行くから2人共セコンド付いたって」

微笑んでそう告げる。

微笑んではいるが、もちろん心からの笑みでは無い、、、

その表情は悔しさを隠す為の仮面だろう。


「いや、でも、、、」

言いかけた崇を遮り

「頼むわ、、、1人にならせてぇな、、、」

背中を向けてそう呟いた。

その言葉をどんな顔をして吐き出したのか、、、

それを考えると、崇も高梨もそれ以上の言葉は出せなかった。


「ごめんけど、荷物だけジムに運んどいて」

着替えを終えた鈴本は誰にとも無くそれだけを言い、1人で控室を出て行った。

今の鈴本は外れた肩よりも心が痛むだろう、、、

彼の無念は皆、痛い程にわかっていた。

少し沈んだ空気が部屋を包んだが、まだ鳥居と山下のエキジビション、そして大作の試合が控えている。

気持ちを入れ替えた崇は

「よっしゃ!鳥やんアップ始めよかっ!」

わざとらしい程に明るく声をかけた。


「俺も山下ん所に行ってくるわ」

高梨はいつもの様子でそう告げると、山下が居る別の控室に向かった。

エキジビションは第3試合と第4試合の間に10分間で行われる。

現在リングでは、第2試合をグラップスの選手同士が闘っている。2人の出番は近い。


鳥居の調子は良さそうだ。

動きが軽い。

一時期、練習に身が入って無かった鳥居、、、

それを見ていた崇は心配だった。

しかしある日から人が変わった様に練習に打ち込む鳥居を見て、胸を撫で下ろしたのを思い出していた。

勿論、崇はそこに長老の力が作用していた事を知らない。

そしてその功労者、長老こと室田は他のジム生達と共に観客席に座している。

あの時の鳥居との約束、、、彼の張った意地を見届ける為に。

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