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格パラ  作者: 福島崇史
53/169

ダウン

鈴本は考えていた。

まだ清水は自分から攻撃を仕掛けて来ていない。

こういう己の身体を信じているタイプに多いのだが、相手の攻めを受け切り、力の差を見せつけた上で潰しにかかる、、、

清水もそのつもりだろうか。

もしそうならば、そこにつけ入る隙がある。

更に先程攻撃を仕掛けた時、僅かばかりの光明が見えた気もしていた。


(攻めて来んならそれでええ。ならば混乱させたる、、、出来るもんなら受け切ってみい!)

鈴本の口角が片側だけ上がる。


鈴本の表情の変化に清水も気づいた。

(なんか企んどるな、、、んなら受けたるっ!)

警戒を強めながらも、未だその顔には余裕の笑みが浮かんでいる。

その直後、試合が動いた。

鈴本が前に出て、又もハイキックと見せてのタックル。


(ケッ!同じ手を喰らう程、、、)

そこ迄思った時、清水の景色が傾き、視界が歪んだ。

鈴本は敢えて先と同じ攻撃を仕掛け、清水がタックルを潰す為に腰を引くのを誘った。

思惑通りに清水が腰を引き頭を下げると、鈴本はタックルには行かずに身体を跳ね上げた、、、アッパーを放ったのだ。

ボクサーの輪島功一氏が得意とした「カエル跳びアッパー」の様な形でその拳は清水の顎を捕らえた。

首を支点に清水の顔が歪に上を向く。

そしてそのまま尻餅を着く様に崩れ落ちた。

「ダウンッ!!」

レフリーが叫んだ。

ニュートラルコーナーに凭れて清水を見つめる鈴本。


カウント3、、、清水がもぞもぞと動いた。

(立つな、、、)

そう願う。


カウント5、、、清水はまだ視点が定まらない。

(頼むから立たんとってくれ、、、)

強く願う。


カウント7、、、視点の定まった清水がブンブンと首を振る。

(!!)

願いは諦めに変わっていく、、、


カウント9、、、清水は何事も無かったかの様に立ち上がる。

(やっぱアカンかぁ、、、よっしゃっ!)

諦めを覚悟に変える。

レフリーが続行の意思を確認すると、構えながら数回頷く清水。


鈴本はハッキリと聞いていた、、、

清水が立ち上がりながら

「もうええ、、、もう飽きたわ、、、」

そう呟いていたのを。


鈴本はその言葉に得も知れぬ不気味さを覚えていた。

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