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格パラ  作者: 福島崇史
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優子、危機一髪

優子は焦っていた。

打ち合わせの時間が迫っている、、、という訳では無い。

室田と鳥居だけの秘密、、、そのはずが、そこに自分が加わってしまった事、それに今更ながら焦っているのだ。

かと言ってのこのこと出ても行けないし、室田の話にも興味がある。

(ええいっ!ままよっ!)

優子は焦りを覚悟に変えた!かっこよく言えば、、、だが。


その後、チーズケーキをつつきながら、長時間に渡り己を語った室田。

その内容はとても軽々しく人に話せる物では無かった。

(言われんでも秘密にするわ、、、)

鳥居は思った。

隣で聞いてしまった優子も思った。

(こりゃ話せんわ、、、)


ジムの仲間で崇の過去を知るのは、大作と優子そして崇を昔から知る兄弟分の新木だけである。

それは他人が軽々しく口に出来る物では無いから、というのは言う迄も無い。

そして室田の過去はそれに似ていた。

聞いてしまった以上は共に背負うべきと思わせる重さ、そして安易に立ち入るべきでは無いある種の神聖さ、、、それらがそこには在った。


「誰にも言わんから安心してな、約束するから」

静かに、そして誠意を込めて鳥居が言う。

(私もですっ!)

仕切り板から顔を出して言いたかったが、それは出来ない、、、もどかしさに身を捩る優子。

聞いておいて自分だけ秘密を誓えない、、、取り残された様な不安すら覚えていた。


優子が罪悪感と戦っていると、又も鳥居が口を開く

「俺、、、ちゃんと意地を張り通すから見といてなっ!で、今の長老が何かを張ってるんやったら聞かせてくれん?」


「フムッ、、、」

室田が暫し考える。

流れる時間、、長老の長考。

その間、懲りもせずに興味を持って聞き耳を立てる優子。

その時、優子より先に来ていた客が、会計にカウンターへと姿を現した。

優子と目があったが、その客は会計を済ますと直ぐに視界から消えて行った。


「ワシが張っちょる物、、、そうじゃな、、、あえて言うなら(カランカラン)じゃな、、、ハハハッ!!」

今の客が出て行く時に鳴ったドアのベルで肝心な所が聞き取れなかった優子。


「ハハハッて、、、聞いたこっちは笑えんわ、、、」

鳥居のリアクションが重い事からも、掻き消された言葉も重い物だった事は容易に予想出来た。

しかしである。秘密の誓いもたてれず、肝心の言葉も聞けず、、、優子は増して行くモヤモヤに腹立たしさすら感じている。

そしてその怒りの矛先は先の客に向けられた。

(まったく、、、あんなタイミングで帰るかね)

完全に逆ギレの八つ当たりである。

心の中でブツブツ愚痴っていたが、優子は大変な事に気付いてしまった。


レジはカウンターにあり、優子の目の前である。

先の客と目が合った様に、室田達と優子どちらが先に会計をしても顔を合わす事になる、、、

(ヤバ、、、)

顔が青ざめるのが自分でわかった。

急に頭をフル稼働させる優子。


策その1、、、トイレに逃げ込む

これはタイミングが難しい。

早く行ってしまうと長く籠る事になり、下手をすれば「大」とも思われかねない。

かと言って2人が帰るのを察してからでは、遅すぎて顔を合わす危険が「大」である。

仮に上手くトイレに入れても、もし2人のどちらかが「帰る前にトイレ寄るわ」とでも言い出したら最悪である。

何かと「大」を伴う「策その1」は優子の思考から「大」のレバーで流された、、、


策その2、、、俯いてスマホをガン見し続ける

逆に目を引く危険もあるが、トイレ案よりは遥かにマシな気がする、、、保留!!


策その3、、、席の反対側に移りレジに背中を向ける

これは名案と思いきや、そこは仕切り板から微妙にはみ出ており、レジに向かって来る2人からは横顔が丸見えになる、、、

却下!


策その4、、、策その、、、策、、、ん~っ以上!!

嗚呼、、、憐れな優子!

半ば諦めて、意味も無く鞄を漁ったり書類を出し入れしたり、スマホを弄ってみたり、、、とにかく落ち着かないで居ると

「そろそろ行こうかぃ」

という室田の声が耳に入った。


(もう、どうにでもなれ、、、)

優子が観念すると

「マスター、代金丁度ここ置くでなっ!!」

とデカい声が響く。


「ありがとうございました!!」

マスターも負けじとデカい声を返した。

(神様、ありがとうございましたっ!!)

優子も大声で感謝を述べる、、、勿論心の中で。


何はともあれ命拾いした優子だが、ベルに掻き消された室田の言葉が気になっている。

しかし優子がそれを知る事になるのは、未だ暫く先の事だった。



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