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格パラ  作者: 福島崇史
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三ツ又の槍

この2ヶ月は本当に多忙だった。

よく忙し過ぎるのを目が回ると言うが、あれは本当なんだと実感する日々を過ごした。

特に優子はスポンサーとの交渉やマスコミへの情報提供、そして資料作り、更には応募者への対応と「八面六臂とはこういう事よ」と言わんばかりの活躍だった。

本来、丸顔だったのが疲労からか(やつ)れて見える。

しかし当の本人は

「痩せた♪」

と喜んでいた。勿論心配させない為の気遣いであろうが、、、


その甲斐あってどうにか始動の目処もつき、あとはオープンの時を待つだけ、、、といった状況まで漕ぎ着けた。

まさに優子さまさまである。

ただリングだけは間に合わず、当面はマットを敷き詰めての練習となる。

まぁ試合を行うなんてのはまだまだ遥かに先の話だし、マットでも練習には何等支障は無い。


崇はオープンに向けて身体作りに精を出した。

指導者とは言え格闘技界に身を置くのだ。それなりの身体に仕上げなくては説得力が無い。

自分なりに頑張ったつもりだが、若い頃とは違い基礎代謝も落ちている、、、

一応それなりの物には仕上げたが、腰回りに付いた「憎き奴等」は未だ薄く居座っている。

そして何より老いを実感させられたのはスタミナ面だった。

「勘を鈍らせたくない」

そう言う大作のスパーリング相手を何度か務めたが、3~4分も動けば息も絶え絶えで、その緩慢な動きはゾンビとなんら変わらなかった。

持久力をつけたくとも足の悪い崇には、ランニングや縄跳び等の有酸素運動は出来ない、、、

オープンしてから設置されているエアロバイクで追々、、、諦めてそう考えていた。


大作はインストラクターとして、鈴本博と高梨哲也の2人をスカウトした。2人共かつてグラップスに所属していたが、諸事情により退団した者達だ。

ブランクは少々あるが基礎が出来ている為、勘を取り戻すのにそう時間はかからないだろう。

この2人は大作と一緒に一般の部を指導する事になる。


そして崇も1人の男に声を掛けていた。

お互いを「兄弟」と呼び合う新木康夫である。

本格的に格闘技の経験は無いが、それなりの知識はあり身体も出来ている。

「ゴツい」を絵に描いた様な男だが、優しくて気遣いが出来る為、障害者に接するのに適任と思い手伝いを頼んだのだ。

別の仕事を持っている為、週に1~2回という条件付きだが快く引き受けてくれた。


さて肝心の会員だが、一般の部には18人、障害者の部には5人の応募があった。

大作のネームバリューを考えると少なく感じるが、スタートとしては上出来だろう。

選手が育てばグラップスをはじめとする他団体の試合にも精力的に出して行く。そこで実績を残せば自ずと会員は増えるはずである。

しかし当面はこの人数なのが現実、、、月謝収入だけでの運営は難しい。

しかし有り難い事にそれを見越したスポンサー「天馬工業」社長が、軌道に乗る迄の間は助けてくれるという。

元々格闘技が好きだったという天馬社長、大作の考えに賛同してくれての力添えとは言え、3人にとっては頭が上がらぬ想いである。


当初大作が考えていたのは4月中のスタート。

1ヶ月遅れにはなったが、いよいよ、、、本当にいよいよスタートだ。

この日、3人は完成したばかりのジムを外から感慨深く眺めていた。

真新しい看板、、、そこには三ツ又に分かれた槍の穂先が描かれており、その下にはGungnir(グングニル)の名が記されている。

それは崇のデザインした団体のロゴ、、、

「打・投・極」

そして

「大作・優子・崇」をイメージした三ツ又の穂先であった。



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