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格パラ  作者: 福島崇史
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開かれた城門

膝関節までもテーピングで固定された大作。

せっかく装具を着けた身体の動かし方に慣れた所だったが、また振り出しに、、、いや、それどころかマイナスまで逆戻りである。

もはや蹴り技には頼れない。

使えるとすれば、牽制の前蹴りくらいだろう、、、

かと言って、この状態ではタックルへも行けない。

狙うのはパンチ、肘打ち、膝蹴り、、、もしくは崇の打撃を捕らえての関節技。戦略はかなり限定される。


(さぁてね、、、)

こちらから打って出るか、それとも距離を取り崇の出方を見るか、、、

大作は後者を選んだ。

ジャブと膝元への前蹴りで、崇が前に出るのを防いでいる。

しかし前のラウンドで逆転を許した以上は、後手に回るのが得策で無いのも事実である。

それにこんな手で、いつまでも崇の攻めを凌げるとも思えない、、、そうこう考えていると、焦れた崇が少々強引に間合いを詰めて来た。

粗い攻めの中に苛立ちが見え隠れする。

そして踏み込んで来たその右脚に、偶然大作の前蹴りがヒットした。

ただタイミングが合っただけの物だったが、崇はバランスを崩し、前のめりに倒れそうになる。


(しもたぁ、、)

崇が焦る、、、

(しめたっ!)

大作が動くっ!!

ヨロヨロと目前に現れた崇の頭部、それを両の(かいな)で愛おしむ様に抱き抱える。

しかしそれを愛情表現と呼ぶには、あまりに狂暴で狂気じみていた。

両腕で作った輪の中に閉じ込めた崇の頭部、そこに体重を掛けて左右に振りながら動きをコントロールすると、大腿部や腹部へと機銃掃射の様に膝を連打し始めたのだ。


(顔面だけは、、、)

当然そう考えた崇は、両腕を己の顔前でクロスさせている。

まさに字の如く、顔面をガードするだけで(手いっぱい)の状況に陥った崇は、頭部以外は打たれるがままとなっている。

身を捩り、角度を変える事で致命打こそ免れているが、小さなダメージでも蓄積すれば、後々厄介な事になる、、、


(チッ!ヤバいなぁ、、、)

なんとか脱け出す手立てを探っていたその時、不意に下半身の力が抜き取られたかの様な感覚に襲われた。

(!?)

大作の膝蹴りが崇の大腿部、その筋肉の隙間へと突き刺さったのだ。

脚に力が入らず腰が下がる、腰が下がる事で頭部も下がって行く、、、そこへ集中砲火される左右の膝。

それは破城槌(はじょうつい)の様に、ガードする崇の両腕を少しずつ抉じ開けていき、直ぐに本丸へと到達して見せた。


崇の頭部が突然跳ね上げられるっ!

目の前に無数の光がちらつき、鼻の奥に鉄の匂いが拡がる。

堪え切れずに倒れそうになるが、タックルに見せかけ大作の腰に抱きついてやり過ごす。

「ダウンやろっ!」

「レフリーッ!ダウン取れやっ!!」

会場のあちこちから声が飛び、朝倉が一先ず2人を分ける。

すると先まで怒声を響かせていた会場に、小さな悲鳴と大きなどよめきが拡がった。


大作から引き剥がされ、リングに四つ這いとなった崇。

その額からは紅い(しずく)が滴り落ち、リングに血の水玉模様を描いていた、、、



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