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格パラ  作者: 福島崇史
158/169

ゴング、、、

「チャンスや、行けっ兄弟っ!!」

勝機と見たのだろう、興奮を隠しもせずに新木が声を張る。

しかし直ぐには動かない崇、先の膝十字でいかほどのダメージを与えたのか、値踏みする様に大作を見ている。

明らかに右膝を気にした動きの大作がそこには居た。

それはそうだろう、壊すつもりで仕掛けた技である、ダメージが無い訳が無い。


だがしかし、、、その挙動を信じて良い物か?

かつて崇は見た。ダメージがあるふりをして相手を誘い、勝利を勝ち取った大作を。

警戒して攻め込めない崇に対し、大作は傷めたはずの右脚を軸にローキックを放った。ガードしながらも崇は驚きを隠せない。

第1ラウンドでは固定された足首に慣れず、まともに蹴りを放てなかった男が、試合開始以降の僅かな時間で身体の使い方やコツを掴んだというのか?

ましてやダメージの残るはずの右脚を軸に、、、

こうなると益々ダメージが本物なのか、フェイクなのかが判らなくなり、崇に次の一手を止めさせる。


「兄弟っ!行かんかいっ!!」

尖った声が飛んだ。

好機に攻めもせず、貴重な残り時間を無駄に垂れ流す崇に対し、新木もイラついているらしい。

そして残り1分を切って直ぐ、動いたのは又も大作だった。

今度は丁寧にワンツーを打ってからの右ローキックである。

ワンツーをパリーで弾いた崇、最後のローキックを1歩下がって捌くと、1度左にサイドステップを踏み、勢いを付けて己の右肩と背中の一部を大作へと叩きつけたっ!!


靠撃(こうげき)

中国武術の多くの流派で用いられている技術。

「靠」は凭れる、寄り掛かるという意味であり、靠撃とは所謂、体当たりを意味する。

多数ある靠撃の中でも、崇の使った技は鉄山靠(てつざんこう)、、、とある格闘ゲームの主人公が用いた事で、日本に於いても有名となった八極拳(はっきょくけん)の技である。

蹴りやパンチの様な華麗さは無いが、70㎏を超える肉の塊がぶつかるのだ、地味な見た目とは裏腹にその威力は大きい。


仕掛けた崇も踏ん張りが効かず、バランスを崩して倒れてしまった、、、しかしダウンを取られぬ様に急いで立ち上がる。

だが喰らった大作はそうはいかなかった。

捌かれた蹴り足を慌てて下ろし、吹き飛ばされぬ様、両の脚に体重をかけてしまったのだ、、、これが間違いであった。

先の膝十字でダメージを受けていた右膝が悲鳴を上げたのだ。

「がぁっ!!、、、」

苦痛に呻き膝をついた大作、顔をしかめたまま立ち上がれない。

「ダウンッ!!」

この試合、大作2度目のロストポイントである。

これにより大作の持ちポイントは3となり、4ポイントを保有している崇が逆転した事となる。


ロープ際で膝をついたまま、無数の脂汗を浮かべている大作、その様子からも膝のダメージがフェイクで無い事は、最早誰の目にも明らかである。

手で汗を拭い、深く息を吐き出した大作は、カウント7でようやく動き出すが、脚に力が入らないのか、なかなか立ち上がれない。


(まさか、、、)

観客席に不穏な空気が流れる。


「エ~イトッ!!」

(オイオイ、、嘘やろ、、、)

対戦者の崇までが、ニュートラルコーナーから心配気な視線を送っている。


「ナイ~ンッ!!」

会場全体に悲鳴の様な諦めの溜め息が響き、本部席では優子がサングラスの上から更に両手で顔を覆っている。


そしてゴングは打ち鳴らされた、、、



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