表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
格パラ  作者: 福島崇史
141/169

優子、きょどる、、、

正面玄関を入るとメイン会場となる2階試合場へと出る。

名目上は2階となっているが、1階は実質地下であり2階が1階という造りである。

見渡すとリングや本部席、招待席など主たる物は既に設置を終えていた。

今大会は「格闘技パラリンピック」という主旨の為、あくまでアマチュアとしてのイベントである。

その為、当然ながら選手にファイトマネーは支払われない。

物販の規模も小さいし、照明もプロの様にレーザー光線やスポットライトを使用する派手な物では無い。


鳥居や山下、藤井などはそんな華やかなプロのリングを経験しているだけに、物足りなく感じるかもしれないが、本来アマチュアのこういう場で実績を築き、ようやく眩しいプロのリングへと道が拓けるものだ。

嫌な言い方になってしまうが、彼等は恵まれていただけなのだ。


それにしても、、、

思い立って独立し、僅か2年足らずで目標だった事を実現するとは、、、

勿論、大作1人でたどり着いた訳では無い。

多くの協力者に支えられての事ではある。

しかしその多くの協力者を得る事が出来たのも、大作の人間力があったからこそだ。

(ほんまに大した奴や、、、)

崇が横目で見ていると、それに気付いた大作。

「ん、何?」

「いや、何でも無い。ところで天馬さん今大会でスポンサー外れるんやて?」

崇は本心を語る事はせず、話をそらしておいた。


「せやねんっ!もともと自立の目処が立つ迄って約束やったし、当初の目標やったラグナロクにもこうして漕ぎ着けた。ええ区切りやからな。ほんまに助けてもらったし、感謝しかあらへんわ。今回も招待席を用意しといたのに、チケット買うからってきかへんのよ、、、結局、会社の人達と観に来てくれるらしくて50枚も買ってくれてさ、、、最後まで頭上がらへんわ」


「ほんまやなぁ、、、」

そんな話をしていると、聞き覚えのある足音と共に優子が現れた。

「おはよっ!いよいよやねっ!福さん、ちゃんと寝れた?」

そう尋ねた本人が、目の周りに黒い影を縁取らせている。

「ああ、万全や」

己の時間を削って大会の為に動いている優子。その前で寝れていないなど口が裂けても言えなかった。


「ほんなら俺行くわ」

大作が軽く手を挙げた。

「なんや、、一緒に控え室行かんのか?」

「ほら、俺これでも一応シャッチョ~サンやからさ、色々せなあかん事あるんよ」

そう言って鼻を膨らませると、崇の向かう控え室とは逆の方向へと歩き出した。微妙に足を引き摺りながら。


「アイツ、足大丈夫なんか?」

見送りながら優子に問う。

「全然大丈夫っ!だってアレ、、あっ!!、、」

慌てて口に手をやる優子。

それを見て崇の頭上に大きな(?)が浮く。

「いや、、だってほらっ!アレ位の故障なんてよくある事やん?」

早口に言い終えると、慌ただしく腕時計に目をやる優子。

「うわっ!こんな時間っ!そろそろ行くねっ!後で控え室に顔出すからっ!」

そう言い残し、逃げる様に去って行った。


「、、、なんや、アイツ、、、」

その背を見ながら呟くと、腑に落ちぬ物を引っ掛けたまま控え室へと向かう崇だった、、、

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ