ロシア その3 サンボ70
ようやく格闘技の話になるけど、3日目にゴッチの案内である場所に連れてって貰ってな。
それが国立武道学校であるサンボ70や。
なんかロシアって異常な程にサンボを国が推しててな。
空港からモスクワ市内に向かう高速道路の脇にも、サンボジャケットを着た男の写真と「健全な人間形成が強い国家を作る」みたいな事を書いた看板が沢山並んでたわ。
そんな理由からか、このサンボ70に入学するのは子供達の憧れでな、実際にここを卒業した人間はエリート扱いなんよ。
その殆どが国や軍に関係する職に就けるらしいわ。
今ではサンボ以外にも柔道や空手、相撲まで教えてるらしいけど、元々はその名の通りサンボがメインでな。それでも11年の義務教育を施す正式な国立校やねんで。
まぁ、、悲しい話やけど、スポーツによる国威誇示ってのはどこの国でもある。
スポーツと政治の結び付きってのが切れないのは確かやねん。そんな中でも共産国ってのは特にそれが色濃い。
数あるスポーツの中で格闘技、それも自国が生んだサンボの専門校を国立で作ったってのが、かつての軍事大国ソ連らしいよな。
そんで共産主義のソ連が崩壊した今でも、それが残ってるってのも、、なんか、、
「共産主義は資本主義に敗けた訳や無い!俺達は盛り返すぜっ!!」って言ってるみたいで意地を感じたわ。
あ、、誤解されたらアレやから言うとくけど、俺は偏った政治的思想は一切あらへんからなっ!
で、いよいよ練習に参加した訳やけども、、、
まあぁ~~レベルの高い事っ!!
尤も俺が組技に関して素人レベルやった事もあるんやろけどな。
元々俺がやってた中国武術にも組技の技術ってのはあってな、関節技は擒拿って言うんやけど、どちらかと言うと合気道に近い関節技やからサンボみたいにガッツリ組む訳ちゃうし、全く通用せんかったわ、、、
それどころか遥かに年下の子供にバンバン極められてなぁ、あん時はそこそこ凹んだわ、、、
そもそも基礎練習からしてレベル高いんよ。
10歳そこそこの子供達が、天井まであるロープを手だけで軽々と昇り降りしてるし、ブリッジやら首を支点にしての前転やら、あとは柔軟にかなりの時間を割いてたなぁ。
筋力は勿論やけど、体幹が強いってのを凄く感じた。
あらゆる状況下で自由に体を動かせるってんで、ロシアではサンボが宇宙飛行士の必須科目らしいけど、それも頷けるわ。
結局その日は3時間ほど一緒に練習させて貰ってんけど、トレーニングはハードやわ、スパーでは極められまくるわでボロボロなってな、自信無くしてもうてこのまま日本帰ろか、、、って気持ちやったわ。
だってそうやん?学生の子供達にケチョンケチョンにされた俺が、次の日からは軍人やプロ格闘家、、、怪物達の巣で寝泊まりしながら練習するんやで?
どんな地獄が待ってるんか想像したら憂鬱にもなるわな。
で!少し怖かってんけど、気晴らししようと思ってな、ホテル近くのバーに1人で行ってみたんよ。
え?なんでホテルのバーで飲まんかったかって?
ゴッチが言うには一流ホテル内のバーに居るロシア人は金持ちやから、マフィアの可能性が高い。だから街のバーの方がある意味安全らしいわ。
それでも危険やから行かん方が無難って言われてたんやけど、、、
飲みたい日だってあるじゃない?人間だものハハハッ!
え?、、うん、、、未成年、、、
だからそこはスルーしろと!ハハハ、、ハハ、、すいません、、、
それとなっ!1つ笑ろた事があるねんっ!
持って行ったタバコが切れてや、街中にあるキオスクみたいや売店で買ったんよ。
そしたら釣り銭用の小銭が切れたから言うて、代わりにガム渡されてやっ!釣りがガムてっ!
おおらかと言うか何と言うか、、、呆れる通り越して笑ってしもたわっ!
ん?、、あぁ、、そうね、、未成年者だものね、、
タバコもダメッ!絶対っ!!
、、、何度も言うけど、そこは頼むからスルーしてぇな、、
で、次の日いよいよエカテリンブルクに向かったんやけど、案の定、、、いや、それ以上の地獄が待ってたんよ、、、