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格パラ  作者: 福島崇史
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特別講習を終えて

鳥居を相手に幕を開けた崇の特別講習。

その後も1ヶ月かけ、全員と各4回ずつのスパーリングを行った。

1回目は鳥居相手の時と同じく道着を利用した技術を見せ、

2回目以降はロシアの軍や警察で使用されている、コマンドサンボ独自の技術を使って見せた。

その中には試合には全く必用の無い技術である、多人数や武器を持った相手への対処法も含まれている。

本来、軍隊格闘術であるコマンドサンボ、当然ながら相手を死に至らしめる危険な殺し技も存在するが、崇はそれすらも皆に惜し気無く披露して見せたのだ。


教えるのでは無く、まさに「見せる」講習と言えた。

それは当初の目的通り、各自が経験をし目と体を通す事で、自分なりに消化をしてもらう為の事である。

最初に鳥居がズタボロにされるのを見た為か、初めこそ皆この講習で自分の番が回って来るのを怖れていたが、後半ともなるとスマホで動画を撮ったりして、未知の技術を吸収しようという貪欲な姿勢も見える様になっていた。


そんな中で1人、ずば抜けた輝きを見せる者が居た。

他の者の吸収力がスポンジとするならば、その者は際限無く水分をその身に貯える、広大な砂の大地の様であった。

その者の名は、、、藤井 一彦である。

固定観念を持たず、技をアレンジし変化させる独創性と柔軟性。そして何よりも素直さが彼の強みであり武器と言えた。

入門時のオドオドとした頼り無さは嘘の様に鳴りを潜め、今は逞しさすら感じる事が出来る。


打撃にもセンスがあり、寝技も吸収が早い。

身体が小さいというウィークポイントも未だ中学2年の成長期である、どう変わるかわからない。

基本は無差別級のグングニルだが、万一このまま小さい身体であったとしても、他団体の軽量級の試合やオープントーナメントに出れば良い話である。

幸い障害も発達障害の為、出場するに当たり身体的な差し支えは無いだろう。

崇は藤井が格闘家として大化けするのを予感していた。


こうして幕を閉じた特別講習、その最終日を崇はこんな言葉で締め括る。

「今回俺が見せた技術の一部は物騒で特殊なもんや、、、一生使わんで済むならそれに越した事は無い。

間違った力を奮う事で怨恨が生まれ、遺恨と悔恨を残す。それが争いや闘いの本質、、、字の如く恨みが連鎖する愚かな物や。でもな格闘技は違う。力を奮い合っても友情や尊敬が生まれる稀有な闘いや。皆にはそういう力の使い方をして欲しい、、、ほんまにそう思う」


重々しい口調でここまで言うと、真剣な自分に照れが出たらしく、軽い口調に変えて更に続けた。

「まぁ、、技ってのは覚えたら使いたくなるもんや、、、いや正確には技の方が試してくれ、使ってくれってねだって来る。だから自分なりに消化して試合で使う分には全然構へんよ。要は使い方を間違えるな、、、そういうこっちゃ!!」


「昔の福さんみたいにっ、、、てか?」

後ろで聞いていた大作がニヤニヤしながらチャチャを入れる。

「大きなお世話やっ!、、、と言いたい所やけど、その通りやから悔しいわ」

皆の笑い声の中で崇が拗ねてみせるが、所詮はオッサン、、、勿論ちっとも可愛くは無かった。


「そんな事より大作、俺の相手、、、決まりそうか?」

表情を戻すのを忘れた崇、口を尖らせたままで問い掛ける。

ニヤリと思わせぶりに嗤った大作

「実はもう決まっとるで!常在戦場がモットーの福さんの事やから、どうせ対策練らんやろうし当日まで明かさへんつもりやってんけど、、、もしかして聞きたいん?」

少し挑発的に答えを返した。

そんな言われ方をしては崇としても下がれない。


「それならそれでええ。俺はやれる事をやるだけや」

こちらは少しムキになって答えて見せた。

「とりあえずミスターXって事でっ!!大会のポスターやパンフレットにもそう記載するつもりで注文入れたから、聞かんでくれて助かったわ♪まあ当日の楽しみにしといてな!」

大作は気楽に言うが、試合当日まで相手がわからない等は普通なら有り得ない異様な話だ。

仕組んだ大作が大作なら、了承する崇も崇である。


こうしてラグナロクまで残り約3ヶ月となった11月初旬、障害の部はかなり早いが忘年会を開く事となった。

本来行うべき12月下旬はラグナロク目前であり、全員が出場する以上は前倒しにする必要があった為である。

場所はエミの店「コモ・エスタス?」崇が電話で予約を入れ、その日は完全貸し切りにして貰った。


そしてその場で、崇は皆にある事をねだられる事となった。


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