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格パラ  作者: 福島崇史
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形勢不利

己の決め台詞に酔ったかの様なドヤ顔を浮かべ、不快指数の跳ね上がった中岡。

怒りも手伝ってか、幾分暑さも増したように感じる。しかし崇は先とは違い、努めて冷静に口を開いた。

「さっきも言うたけど、それは俺の言葉や無い。アンタが勝手な解釈で捻じ曲げた言葉やろ、、そんなもんを記事にするつもりか?」


「するつもりやけど?」

当然とばかりに中岡が答える。

「そんな記事書いてオッサンに何んのメリットがあるんや?反対派から金でも貰っとんか?」

大作が腕を組み、見下す様な目を向けた。

崇も黙って答えを待っているが、その視線は鋭い。

しかしこの男は人にどう見られようが、どう思われようがダメージとはならないらしく、そよ風にでも吹かれてるように視線を受け流している。


「おいおい、人聞き悪い事言わんといてんか、、金貰って記事を捏造するなんて事はせえへんよ」

小バカにした様に答えた中岡だったが、顎に手をやり何やら考える仕草を取ると、頭上斜め45度辺りに視線を向けながら更に続けた。


「メリットねぇ、、無いよ。書く事でのメリットは、、、な。ただ、そっちはちゃうやろ?書かれる事でのデメリットは大きいんとちゃうか?」

そこまで言うと又メモ帳を1枚破り、吐き出したガムを丁寧に包んでごみ箱へと手を伸ばした。

そして口の前に手を広げ、そこへ息を吐きかけると自分の口臭を確かめている。

どうやら納得出来たらしく満足気に頷くと、再びその目に嫌な光を宿し続きを話し始めた。


「ラグナロクも近くなった大切な時期や、、そんな時にこれが新聞に載ってみいな。反発の声が多数出るのは勿論、スポンサーを外れる企業も出てくるやろなぁ、、、そしたらラグナロクどころか、今後の興行、、そしてグングニルの存続その物までが危うくなってくる。そんな事なったら気の毒やなぁ、、そう思ってなぁ」

いけしゃあしゃあと言いニヤリと笑う。


(なるほど、やっぱりな、、)

薄々感づいてはいたが、崇はようやく確信した。

要は恐喝、、、ユスリが目的なのだと。

崇が心の中で確信したのに対し、大作は堂々とそれを口に出した。

この辺りは優子の悪癖の影響が見える、、

「ふ~ん、、金貰って捏造はせんけど、捏造するぞと脅して金は取るんや、、」

先までの冷やかな態度から一転し、今度は大作がニヤリと笑みを浮かべた。


中岡はその意外な反応に少し驚いた様子だったが、悪代官よろしく直ぐに元の表情へと戻ると

「おいおい、、ワシは何んの要求もしてへんで、、さっきから人聞き悪い事言う奴っちゃな、、」

そう言うと未だ笑みを浮かべる大作へと、不敵なその笑みを投げ返した。


「金やないなら何が目的なんや?」

笑顔の視殺戦を交わす横から崇が問う。

「ワシは金を要求しても無いけど、金やないとも言うてない。どう判断するかは、そちらさんが決める事やでな。例えアンタ達がワシの話を無視したかて、ワシにとってメリットは消えてもデメリットは無い。しかしアンタ達は違うやろ?あれが記事になるデメリットを消す為にはワシの話は無視出来へんはずや、、つまり選択肢は1つやっちゅう事っちゃな」


勝ち誇った顔で言う中岡。

崇がチラと大作を見やる。

すると何故か先と同じ様に笑みを浮かべたままで、そこには余裕すら見て取れる。

それに気付いたのか、中岡が諭す様にこう続けた。

「後からそんな事は言うてへんって否定するつもりかも知れんけどな、、言うた言うてへんの水掛け論になった場合、世間ちゅうのは不思議なもんで先発の方を信じるもんや。ましてやスポーツ新聞とはいえ、新聞の記事ってのは世間に信用されるでな。不利な失言を後から否定したかて、世の連中は信じへんもんやで」


あれっぽっちのメモのみで、ボイスレコーダーも使っていない、、つまり言った証拠も無いが、言ってない証拠も無いのだ。

その事を考えると中岡の言う通り、記事になってしまった場合、後手を強いられる事となる。

それに後から何を言おうと焼け石に水、、いや火に油ともなりかねない。

崇は圧倒的不利な状況に焦りを感じていた。

背と脇に暑さが原因とは別の汗が浮き出るのがわかる、、


「さっきワシは強い方につく言うたやろ?でもなワシが一番得意なんは強者を見極める事や無い、、弱者を見極める事やねん。個人やろうが企業やろうが、何かしら弱味っちゅうのを抱えとるもんや。それを嗅ぎつけるんが、記者としてのワシの能力っちゅう事っちゃ」

勝利を確信したらしく中岡の饒舌が加速している。

なるほど、この男がこの歳になってもヒラの記者なのがよくわかる。

不快な上に不正も働く、、

辞書で(人間のクズ)と調べたなら(神戸スポーツ社の中岡記者の事)とでも書いてるんではなかろうか、、崇はそんな事を考えていた。



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