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格パラ  作者: 福島崇史
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戦闘開始!

中岡は噛んでいたガムの味が消えたらしく

「悪いっ!ガム捨てたいんやけど、ごみ箱どこかいな?」

キョロキョロと周りを見回している。

「テーブルの下やけど、、そのまま捨てんなよ」

大作の答えに、わざとらしく胸やズボンのポケットを探る。

無い事を知った上で行った、包紙を探すポーズ、、

それを止めると、さも困ってますとばかりに顔に皺を集め、大作と崇にチラと視線を投げた。

しかし冷やかに己を見つめる2人を見ると、諦めの溜め息をつき、手にしていたメモ帳を1枚引き千切った。

予想に反して、吐き出したガムを綺麗に包むと、テーブル下のごみ箱へと捨てた中岡。

それを見ていた大作と崇は、2人して同じ事を思っていた、、

(そこは丁寧なんかいっ!)


新たに2粒のガムを口に放り込んだ中岡、ようやく、、、本当にようやく本題を口にした。

「ラグナロク、、日程も決まったみたいやね」

口の動きと共に、まだ硬いガムがカラコロと音を鳴らす。

「、、お陰様で、、」

崇が答えるが中岡がメモを取る気配は無く、先程身体の一部をもぎ取られた哀れなメモ帳は、本懐も遂げれずテーブルの上にその身を晒している。

そして中岡はニヤニヤしながら腕を組むと、信じられない言葉を吐き出した。

「実はね今日訊きたいんは、ラグナロクその物の事や無いんよ」


大作と崇の怪訝な表情を見て、実に愉しそうな笑みを浮かべると、追い打ちをかける様に続ける。

「いやねぇ、、2人も知ってるとは思うんやけど、ラグナロクに対して反対する声や否定的な意見も多いんよねぇ、、それについてどう考えてるんか、そこが今日の取材の目的なんよ」

ふんぞり返り、薄く開いた目を向けながら2人からの答えを待っている。

先までカラコロとその身を転がしていたガムは、既に溶けており、吐かれるその言葉と同じく粘着質な音を発している。


「元々、万人の賛同を得られるとは思ってませんし、そういった意見が出るのは想定してました。というか、、世の中何事も反対意見が出て当然だと思ってますんで、特に気にはしてませんよ」

崇は大人の対応で真剣に答えたが、その横では大作があからさまに険しい表情を浮かべている。

太陽と比喩される大作は完全に鳴りを潜め、今にも怒りの雷を降らせそうな雲行きである。


崇の答えに1つ頷いた中岡、ソファの上でジリジリと尻を滑らせると、前のめりになりテーブル上のペンを手に取った。

「て事は、、そういった意見は相手にしない、、と?」

「ちゃんと目は通すし、そういう考えもあるんだなぁ、、とは思いますよ。しかしラグナロクは障害を抱えた者達の大きな目標であり悲願なんです。反対意見があるのは理解した上で中止するつもりはありません」

挑発的な質問に、流石の崇も怒りのゲージが少し上がったが、それでも冷静に言葉を返した。


「つまり耳を貸す気は無い、、そういう事やね?」

相変わらずニヤニヤしながら、窺う様な目を向ける中岡。

「そういった意見に1つ1つ反論していては、大きなトラブルにもなりかねない。それにこちらの反応を楽しむ為に敢えて悪意ある言葉を吐く連中も居ますから。ネットワークに参加しているジムや道場も、反応を見せないという事で意見は一致しています」


崇のこの言葉には中岡に対する皮肉も存分に込められている。

それを知ってか知らずかは判らないが、中岡が初めてペンを走らせた。

テーブルの上で開かれたままのメモ帳、、そこに記されたのは、、、

(相手にしてられないから無視)

という文字。

悪意に充ちたニュアンスに置き換えたそれを、敢えて2人に見える様に書いた様子だが、2人にはその真意までは見えていない。


一気に怒りゲージの上がった崇が、身を乗り出してその怒りを吐き出そうとしたその時、太ももを抑える強い力に遮られた。それは大作の手であった。

驚いた崇が大作を見ると、小刻みに首を振っている。そしてその顔は、、見ようによっては怖い笑顔を張り付かせている。

大作は崇が乗り出した身体を、再びソファに沈めるのを見届けると、怖い笑顔のまま静かに中岡に告げた。

「続けよか、、記者さん、、」


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