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プロローグ
心身の障害で何かを諦めた人々に贈る。
プロローグ
「思ったより痛くないねんな、、、」
これが最初の率直な感想だった。
福田大作は前々から興味を持っていた刺青を入れる事を決めた。
そして今、六畳一間の安アパートの一室で彫師に背中を預けている。
「チャッチャッチャッ」
小気味の良い音を響かせて針が進む。
知人に紹介してもらった彫師「山宗」は少々変わっていた。
本来なら一番の顧客であるはずの極道筋。それを一切「お断り」している。
そして今はマシンを使った「機械彫り」が主流だが、彼はマシンを一切使わず「完全手彫り」で作業を行っていた。
そんな山宗を大作は「面白い」と感じた。そして背中を預ける相手に彼を選んだという訳だ。
そしてこの出会いによって、彼等の人生が大きく動くスイッチが入る事となるのだった。