綾の邪悪な微笑み
どこまで・・頑張れるのでしょう・・・
(メガネを外すと晶も結構いけてるはず・・)
綾は心の中でそう思う。以前、コンタクトにすれば
いいと晶に言ったのだが、提案は軽く一蹴された。
黒髪が肩までかかる。
普段ずっとおさげでいるから、髪を下ろすと少しだけ
うっとおしく感じてしまった。
メガネがないから、景色は軽くぼやけている。
綾が目の前にいるが、咲良はどうしたのだろう?
―そう、晶が思ったときだった。
「ねぇねぇ!今日、体育あったよね?体操服に
着替えて欲しいんだ!」
綾がいつもと同じ声色で明るく言う。
「た、体操服??」
「うん♪」
「ど、どうして?ボク・・・・」
「いいからいいから♪」
―ここが正念場だ。晶を何としてでも疑念を抱かせずに
着替えさせなければならない。
・・綾の計画はこうだ。
体操服に着替えろ、と言って、制服を脱いだときに
咲良の持ってきたフリフリワンピースに無理矢理
着替えさせる。
(そう・・・力づくでも・・ふふ・・・)
少しだけ邪悪な微笑みを浮かべてしまう綾。
ああ、まるで中年のおっさんが若い娘を騙して
カドワカシテいる気持ちになる。
・・って中年のおっさんの気持ちなんか知らんがなッ♪
しかし晶はなかなか脱ごうとしない。
それはそうだ。ここは部室で、しかもお願いがある
と言われて・・・どうして体操服?
普通ではない状況だ。
晶も少しモジモジしてしまっている。
「・・・どうしてボクが体操服に着替えないといけないの?」
再度同じ質問をぶつけてくる晶。
しょうがない。奥の手を使うしかないか・・・
「いや、わたしも体操服になるよ?」
綾はそう言いながら手元に置いてあるナップサックから自分の
体操服を取り出す。
きれいに折りたたまれている体操服を広げて晶を安心させる
ように見せた。
「そっか・・・わかったよ。ボク着替えるね」
晶は少し安心したのだろう。先ほどより表情が緩んで
微笑みを浮かべた。
「あ、体操服出さなくちゃだね」
荷物から体操服を取り出す晶。その体操服が使われることが
ないことをこのときの晶はもちろん知る由もない。
夏服の上着に手をかけて、するっと脱ぐ。
白いTシャツ姿の晶。メガネを外して髪を下ろしているから
これだけでも男子にとって見ればポイントは高いのではないか
と思われる。
晶はそのまま体操服の上着を手に持って着ようとしていた。
「あ!ちょっと立ってくれる?」
綾が晶の動きを制止する。手に持った体操服を半ば強引に
奪い取って晶のほうを見る。
「あ、うん」
何の疑いも持たずに正座を崩して立ち上がる。
「先、こっちね!」
綾は晶の体操服の中からスパッツを差し出した。
晶は普段、スパッツをスカートの中に履いたりはしない。
もちろん今もそうだ。
だからスパッツが先、と言われてそのまま何の疑いも
持たずにスパッツに両脚を通していく。
綾はその様子を見ながら、いつの間にか戻ってきた
咲良に目配せをする。
晶の背後に立つ咲良。
手にはナップサックを持っている。そのナップサックの中には
計画の本体が収められていた。
スパッツを履き終わった明が体操服を受け取ろうを綾から
受け取ろうと待っていた。背後の咲良には気づいていない。
「あ、先に下脱いでね♪」
綾はそういつもの笑顔で晶に促す。微笑みの端に少しだけ
おっさんの邪悪な微笑みの陰が垣間見える。
「あ、うん・・・ボクの制服、どうしておこう?」
「そのまま畳んでおいておけばいいよ~誰も来ないだろうし♪」
そりゃそうだ。咲良が鍵をかけてるんだものw
思わず口が緩む。ここまであのカタブツ晶をうまい具合に
誘導することが出来ている。
最後の正念場・・晶にフリフリのワンピースを着せるということ
・・まであともう一押しである。
少し背の低い晶がスカートの留め金に手をかける。
まじめな晶はスカートを折ったりはしない。
そのままストーンとスカートは足元に落ちていった。
そろそろ眠くなってきました。また後日にするかもしれません。