俺対ケビン
筋肉の塊をコーナーに押し込んだケビンはレフェリーにクリーンブレイクを促され、躊躇うことなく相手の両肩を軽く押すようにして距離を保ちながら何もせずにブレイクした。
おいおい、俺たちは一応悪役なんだぞ。
相手も少し戸惑ったようだが、そこはベテランの策士。
うつむき加減にロープ際を選んでにリングを回りながら次の手を考えているようだ。
そこにいきなりケビンが突っ込んで行った。
有無を言わせぬ勢いで、ガンガン打撃を打ち込んでいく。
相手の膝が落ちたところで、フロントからのネックロック。じりじりと引きずって俺のいるコーナーに敵を連れ込んだ。
まだどのチームも消えていない状況でヒール同士で潰し合うってのはいかがなもんだ。
後でまた小言喰らうぞ。これは。
と入っても流れは変えられない。
俺は背後からベテランマッチョの動きを封じ、ケビンはやりたい放題に打撃を打ち込む。
そして、打ち疲れたケビンが俺にタッチをしたので、今度は俺がリングに入る。
ベテランマッチョはその隙を突いてリング中央に戻ろうとするが、そうは行かない。
俺は背後からタックルして奴を倒し、ヘッドロックで引きずり起こして、自軍のコーナーに奴を連れ帰ろうとした。
すると奴は背後から俺を押し込むようにケビンの待つコーナーに向かい、なんとケビンにタッチしやがった。
レフェリーも戸惑っているが、そんな細かいことまでルールに明記されていないぞ。
と言うか、リングで戦うのは常に二人で、誰とタッチしても良い。
それ以外のルールなんて聞かされていない、そもそもきっと無いに違いない。
唐突にケビンと俺がリングで向かい合うことになった。
ベテランマッチョはフラフラしながら自軍のコーナーに戻る。