リングイン
暗くなった会場が静まり返ったのを見計らったかのように、突然大音響のパイロと共に真っ赤に照らし出された。
赤鬼の登場だ。
先に入場していた三チームの選手は場外に出て、奴のリングインを待つ。
赤鬼がリングの中央で仁王立ちするのを待って照明が薄暗い青に変わった。
ドライアイスのスモークがエントランスを這うように流れ始め、おどろおどろしい音響と共にタトゥーが姿を現す。
全身黒ずくめのコスチュームでゆっくりとした足取りでリングに向かう。
生唾もんだ。
これから戦う相手だが畏怖の念を禁じ得ない。
俺はもうお腹一杯だぞ。
真打二人がリングで揃い踏み。
見得を切った後ようやく照明が戻った。
会場が明るくなり、我に返ったかのように観客達の歓声が大きくなるにつれ、ようやく現実に引き戻された。
ケビンと共にエプロンに上がり、先発の俺はロープを潜ってリングに入る。
もう一人の先発はアスリートチームの黒人の方。
よおく分かっているぞ。
俺と奴が先発に選ばれたって事は、とりあえず動き回って雰囲気を暖めろってことだ。
いつもより余計に動いてやろうじゃないか。
レフェリーがゴングを要請すれば試合が始まる。
もうじたばたしても手遅れだ。
低い姿勢で戦闘モードに入る。