やつれたベテラン
もう一人の俺がベテランレスラー相手に、大人気ないスパーリングしやがった。
少なくとも練習生の域ではない。
相手に油断があったとしても、プロ相手に勝っちまいそうだった。
即戦力間違いなしってところだな。
その後は格闘技経験の無いデビッドはそのでかさとそれに見合わぬ速さを披露して見せた。
ケリーはその運動能力と天性の華と云うかカリスマ性のようなものを発揮し、少しばかり格闘技をかじったエディとルークも非凡なところを見せてスパーリングは終了した。
六人の相手と戦い終わった頃には、二人のトレーナーはすっかりやつれていた。
立ち会った人事部長をはじめとする関係者達は、皆口元が緩んで早速契約の話が始まりそうだった。
残念ながら、俺とケビンは特番に向けてもう出かけなければならなかったので、その後のことはまだ知らないが、おそらく全員採用だろう。
ここで暫くもう一組の連中のことは頭から切り離し、自分のことに専念すべきだ。
特番での大物達を相手にした戦いにどう望むか。
行き当たりばったりの相棒には任せて置けない。
試合結果以前のところでどうアピールしていくかだよな。
考えるの担当は辛いぞ。