同じ思考パターン
ようやくプロレスラーの俺が到着した。
食事も終わり、話し合いも取り留めの無い物になりかけていた頃だった。
暫くは試合を終えたばかりの二人の男も討論の輪に入ったが、彼らの食事が終わる頃には話は雑談と化していた。
俺は個人的な欲求もありもう一人の俺と一対一で話を術く連中と少し離れた場所に席を移した。
当然と言えば当然だが、奴も同じ思考パターンの持ち主で、何気に俺達は二人で面と向かうことになる。
いざそうなってみると何か違和感を感じる。
初めてテレビで奴の姿を見たときの驚愕。
奴が俺の存在を知る以前に俺は奴を知っていた優越感。
そして昼間ほんの少し遭遇したときの雰囲気と随分違って見える今の奴の印象。
いろいろな考察が頭の中で入り乱れて考えがまとまらない。
奴の頭の中も同様だろう。
向こうがこっちの存在を知ったのは今日のことなのだから、俺以上に揺れているはずだ。
ほんの数ヶ月前までは、俺達は一人の人間だった。
しかしどこかで分裂した俺達は少しづつ別の個性が成長し始めているようだ。
それがお互いの存在を知ることになって以来加速している。
他の仲間達も戸惑いは隠せないでいる。
しかしこの状況に頭を抱えるというより、奇妙な体験を楽しんでいる節もある。
ケビンに至っては既にもう一人に自分とタッグを組む気でいやがる。
明日のトライアウトの結果が楽しみだ。
と言うよりも、既にそれに合格してもう一人の俺と同じ舞台に立つことを想定している自分がいる。
考えても仕方ないなら、思うままにやりたいことをやってみよう。