ケビン大明神
試合の流れが荒っぽくなってくる。
やりたい放題暴れるのがお仕事のヒールの俺達の展開だ。
とにかく滅茶苦茶な乱闘が大好きなケビンは、なぜか額から血を流し椅子を振り回して大暴れしている。
特番前に大怪我すんなよ。
一頻り場外で暴れた後、リングに戻った両チームは高いテンションのまま打撃戦だ。
こうなると俺のフィールドだぞ。
打撃攻撃に対応しきれない白人の方を蹴りまくって自軍のコーナーに引きずり込む。
一息ついたケビンにタッチすると、スタミナ切れの相手の脳天にエルボーを打ち込み、ロープに振ってカウンターのスパインバスター。
のはずが抱えあげたところでDDTに切り返された。
隙を突いて選手交代、替わって入ったのは、スタミナ充填済みでアドレナリン全開の男だ。
コーナーに詰められたケビンはトップロープにヒョイと飛び乗った野郎にたこ殴りされている。
対戦相手のパンチに合わせて観客達のカウントを取っている。
おいおい、やられてるのは地元のヒーローじゃなかったのかよ。
パンチの雨が収まったタイミングを見逃さずケビンがパワーボムで相手をリングに投げ捨てた。
本来叩きつけるべき技だが、この際距離をとりたかったというのがケビンの本音だろう。
転がり込んできたケビンとタッチしてリングイン。
起き上がった相手を捕まえにいこうとしたらキックが飛んできた。
しかしこの足をキャッチする。
残った片足でぴょんぴょん跳ねてバランスを取ってやがる。
それじゃあとその足を横に流して至近距離からのクローズライン。
しかし空中で綺麗に一回転した奴のキックがもろに顔面に入った。
痛いとかいってる場合ですらなかった。
すぐさまフォールに来たのはケビンがカットしてくれたが、今のは強烈だった。
あんな器用な蹴りはちょっと真似できないぞ。
まるでワイヤーアクションみたいだ。
対戦権の無いケビンをレフェリーがコーナーに戻そうとしている間に相手は交代した。
今度は奇妙な関節技だ。
足首を極めたまま背骨を捻り上げやがる。
なんてことするんだ。俺の体はそこまで曲がらない。
レフェリーがギブアップするか尋ねてくる。
ケビン大明神が助けに来た。
技は解けたが敵コーナーに拉致された俺はいいように甚振られる。
何とか切り返さねば。