夢の辻褄
ガタガタ揺れるので目が覚めた。そう言えば病室を替わることになっていた。
状態は安定しているので集中治療室から一般病棟に移ることになっていたんだった。
ベッドに寝かされたままのお引越しだ。
それにしてもおかしな夢だった。元気な頃からあまり突飛な夢は見たことがなくて、俺にとって夢はわりと現実的なものだったのに、夕べのプロレスはかなりいつもと違っていた。
まず対戦相手のおっさんの血が黒かったこと。黒と白と灰色しかない白黒の世界だった。それに観客の声援やリングアナウンサーのコールも無い静かな展開。そのくせゴングの音やレフェリーのカウント、実況アナウンサーの声とか、聞こえてくる音だけはやけに鮮明に聞き取ることが出来た。
見たこともないような技を仕掛けられたり、産まれてから今までに経験したことがないくらいの痛みを味わったり、使ったことのない技を次々繰り出した展開も妙な気がする。
もちろん夢の中ではそれこそ夢中で戦っていたせいかまったく気にも留めなかったことなのに、後から振り返ってみると辻褄の合わない事だらけだ。
でもはっきりと思い出せるし実体験のように体も覚えているから、目が覚めてからの生活にその経験が活かせそうな気がしている。
そう考えると次に見る夢が楽しみになってきた。