ロープに走る
セミファイナルが始まった。
入場シーンから館内は熱気に包まれ、まるでこれが今日のお目当てだったかのように観客達は盛り上がっている。
この後、やりにくいぞ。
序盤戦ではまず大物二人がどれくらい打たれ強いかを証明する。
相手チームの攻撃をことごとく正面から受けて、何事も無かったかのように涼しい顔でタッチワーク。
中盤に入り反則絡みで多少不利になると、タッチして入った選手の無双劇場だ。
良血の若手二人もセンス抜群、弩派手なバンプで盛り上げる。
いい試合だ。
フィニッシュは大物二人が同時に必殺技のお披露目だ。
カウントが入ると、それぞれのキメのポーズで並んで見得を切る。
ミス一つ無かった。
やっぱりこっちがメインイベントでよかったんじゃねえか。
大物達のテーマソングと交錯するように、今夜の対戦相手のテーマソングが流れ始めた。
さあいよいよだ。
ベビーフェイスの対戦相手がハイタッチを繰り返しながら入場し、リング上でにこやかにファンにアピールしている。
俺とケビンがセルを廻す。
いつも以上に景気良く空吹かしだ。爆音軍団に文句を言える筋合いは無いか。
排気音と共に俺達のエントランステーマが流れ始める。
まずはゼロ戦をモチーフにした6Rに乗った忍者がウィリーでリングに向かう。
必要以上にエンジンを廻しながらリングを一周する。
続いてビューエルが地元のヒーローを背に颯爽と登場。
リングを一周した後はジャックナイフだ。
リング上で四人が対峙する。
今夜に限っては普段はヒールの俺達にも大きな声援が飛ぶ。
前の試合の興奮がそのまま残っているようだ。
向こうの先発は黒人の方、こっちは俺が先発だ。
ロックアップはせずにお互いロープに走る。