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百戦錬磨

 リングの対角線に、小柄だが精悍な男がこちらを睨んでいる。

無駄な肉の無い均整の取れた体躯と鋭い眼光。

どう見ても只者ではない。


 黒いショートタイツに編み上げのレスリングシューズ。

クラシカルないでたちで、体をほぐすように軽くステップしながら首を左右に振っている。

老け込んではいないが百戦錬磨の雰囲気が漂う。


 さてどう戦うか。

クルーザー級の選手だが、飛び回る選手のようには思えない。

様子を見ようにも、これだけサイズに差があると、ロックアップや手四つってわけにもいかないし。


 距離を置いてリングを回って出方を窺っていると、不意に姿が消えた。

次の瞬間下半身を支える物が無くなり俺は尻餅をついた。

凄まじいスピードのタックルだ。


 足をすくわれダウンした俺の上に乗り、いいように関節を取りにきやがる。

倒されてしまえば俺の手足の方が長いのは奴にとって好条件になる。


 このグランドの達者さは、アマレス仕込のようだ。

一通りいい所を見せたので気が済んだのか何度目かのロープブレイクの後、スタンドでヘッドロックに極めてきた。


 なるほど、今度は俺の番だってことか。

お手並み拝見ってか。


 ロープに飛ばす。

帰ってくるところを一度はジャンプでかわし、次に戻ってきたところでショルダータックル。

こうなりゃ打撃戦で勝負だ。

起き上がってきたところにドロップキック。

ヨーロピアンエルボーでコーナーに詰めて逆水平。


 動きが緩慢になってきた野郎にコブラツイスト。

体力の差に物を言わせて締め上げる。

かなり効いているのか、奴の奥歯が軋む音が聞こえた。

しかし次の瞬間奴の指が俺の目を狙ってきた。

サミングだ。

悪役レスラーの印象は無い相手だっただけにこれには焦った。


 顔色が一気に赤くなり、拳を握り締めてこちらを睨み上げている。

頭から湯気が出てるぞ。


 打撃戦でこようってのか。面白いじゃねえか。

と思うまもなく、左の拳が高速で近づき顎にいいのを貰った。

痛いと感じる前にもう一発、左。

右が来る前に腰を落としてしまったので助かった。

踏ん張ってたら右フック貰って脳が揺れてるところだった。


 ボクシングそのものじゃねえか。

何だこの野郎。

レスリングもボクシングも並じゃないぞ。

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