二本目
経験したことの無い試合形式に戸惑う間もなく二本目開始のゴングが鳴った。
額からの出血が止まらないおっさんは手ぬぐいを包帯代わりに頭に巻いてまだ肩で息をしてやがる。
ここはもう行くしかない。一本目を選手して勢いはこっちにある。一気に攻め込んでとっとと終わらせよう。
ロープに振って戻ってくるところにカウンターでスピアーに行こうとしたら、その上を跳び越されて丸め込まれた。
芸術的なローリングクラッチホールドだった。後方へ転がされてマットに肩が付いた時、おっさんのふくらはぎはもう俺の両肩を押さえ込んでいた。
あっという間にタイに持ち込まれた。見事な三味線にしてやられた。
気を取り直して決勝の三本目、さっきまでの呼吸の乱れが嘘の様に突進してきてドロップキック。
これがまあ、女子プロレス張りの正面跳び。男でこのタイプのドロップキックやるのは、かわされるのが分かってるときに放つ藤波辰巳くらいのもんだぞ。
胸板にヒットしたものの、お尻は跳ぶ前から数センチしか浮いてないし、上体は明らかに立っていたときより低い位置にある。
衝撃が小さいと感じたわりにはかなり吹っ飛ばされた。バックを取られてまたもや足取り首固め仕掛けてきた。技のネーミングはともかく、痛いのは格別の技なんで二度目を喰らうのはごめんだ。
ファイヤーマンズキャリーでサイドに転がし腕殺し、クロスアームブリカーに持ち込んだがロープエスケイプ。
もう一度担いで今度は高い位置からファルコンアロー。のつもりが、体が勝手に動いてエアプレンスピン。くるくる回り始めたら止まらない。一本目もジャイアントスイングだったしカスタニョーリも真っ青な今日の俺。10回以上回した後にデッドリードライブで仕留めることが出来た。
不思議な力に操られながらも何とか勝つことが出来た。いや、もしかすると操られたから勝てたのかも知れない。