同じバイク
店に着いたらコーヒーで一息つこうと思っていたのだが、不思議なことが起こり始めた様だ。
バイクはちゃんと走っているのに、一向に店が近づいてこない。
アクセルは開けている。
スピードメーターも進んでいることを伝えてくる。
何か得体の知れない力が働いて、俺達を店に近づけまいとしているようだ。
ほかの仲間達もこのおかしな感覚を味わっているのだろうか。
少しずつ店に近づいているような気はするが、まだ先客のバイクが何か判別できない。
しかし、大体の見当はついてきた。
俺の嫌な予感は『予言』に等しい。
まず間違いなくあれは俺達のバイクだ。
そうなると俺とケビンだけではなく仲間達も自分と対面することになるのか。
自分のことだけでも面倒臭いのにケビンがもう一人いて鬱陶しさ倍増で、これに後七人も出てきた日にはもう対処しきれんぞ。
しかし何だ。もう一組の俺達は俺達のこと知ってんのかなあ。
どのタイミングから俺達は二組になってしまったんだろう。
いや待てよ。この分だともしかすると、まだまだ色んな所にいっぱい存在してるのかもしれないぞ。
それとも奴らは未来とか過去から来たんだろうか。
過去から来たなら今の俺はそれをもう経験済みで知ってるはずだからそれは無いか。
う~ん。取り留め無さ過ぎだ。
これ以上考えても仕方ないと脳味噌が認識した頃、店の前のバイクが確認できるようになった。
七台停まっている。
俺とケビンのバイクが見当たらない。
先頭を行くケビンが店の前に着いた。
先客たちのバイクに並べて停める。
バイクを降り顔を見合わせる。
皆大体同じことを考えているようだ。
少しばかり意を決して入り口に向かって歩き始めた時、店の扉が開いた。