乱入
テレビでは、試合の流れが停止し、四人の男が這いつくばっている。
唯一自分の足で立っているレフェリーが思い出したかのようにカウントを取り始めた。
カウントが進みエイトまで進んだ時だった。
画面に映るダウンしたままのレスラーの姿とは裏腹に、スピーカーからは観客のざわめきが聞こえてきた。
何が起こったんだ。
カメラが切り替わると、そこにはリングに向かう金髪を長く伸ばした男と髪を短く刈り込んだゴツい男が二人映し出された。
その後ろから小柄だが肉付きの良い男が高級そうなスーツに身を包んでついて来る。
現れた男達はリングに上がると、二人掛かりで動けない大男に攻撃を加え始めた。
後から来た男は場外で最後に出てきた黒ずくめの男に攻撃を加えている。
状況の変化についていこうと画面を食い入るように見ていると、場外では忍者の俺がスーツの男の足にしがみつき、その隙に黒ずくめの大男が反撃に転じた。
息を吹き返した黒ずくめの男がリングに戻り、乱入してきた二人に向かって行った。
しかしパートナーらしき男はすでに戦闘不能だ。
多勢に無勢。押し込まれ始めた男を救ったのは、なんと忍者の俺とケビンだった。
上着を脱ぎ捨てリングに上がった男も含め三対三の戦いだ。
レフェリーは必死で制止するが何の効果も見られない。
そんなときにまた、ひときわ大きなざわめきが起こった。
エントランスから二人の男が駆け込んでくる。
今度は白人と黒人の二人組で、進入速度の速さからしてかなり動ける選手達のようだ。
リングに駆け上がった二人の標的は俺とケビンだった。
すでに消耗している俺達はいいように切れの良い攻めを受けている。
これでまた形勢逆転、リング上は何人もの男達の乱闘で収拾がつかないでいる。
ここでCMだ。
CMが明けるとレフェリーやセキュリティが大勢出てきて選手を分け事態は収拾されつつあった。
リングが落ち着きを取り戻すとGMが登場して、それぞれ抗争中の四組のタッグチームが今度の特番でタイトルを賭けて戦うことを決定したらしい。
互いにマイクを取り罵り合うシーンで放送が終了した。
いったい何なんだこの番組は。
明らかに俺の忍者が使った蹴りは実際俺が得意な技だし、やってみろと言われれば間違いなく同じことが出来ると思う。
でも俺はここにいて生放送でプロレスなんて出来るはずがない。
となるとあの忍者は誰なんだ。