カミカゼ・アタック
忍者袴と地下足袋を履き忍者頭巾を被った俺は、稲妻に打たれた時に胸に出来た大きな日の丸の痣を鎖帷子で隠し、ゼロ戦に跨った。
リング上ではケビンと赤鬼が試合中だ。
場外乱闘でケビンが流血しリングに戻って絞め技でいたぶられ始めたら俺の出番だ。
一方的な試合展開になりだしたので、セルを回しスタート。
エントランスでリングの方向にバイクを向けて一旦停止、アクセルを捻り軽くウィリーさせて一直線に駆け下りた。
リングサイドにゼロ戦を止めると仁王立ちする赤鬼と真正面から対峙する。
そして一度右にフェイントを仕掛けてからの飛び後ろ回し蹴り。
見栄えもするし忍者っぽいからまず初めに使う予定だった技だ。
当然きれいに赤鬼の頭に命中。
その後は一気に蹴りの集中砲火で赤鬼に何もさせない時間帯。
ダウンを奪いケビンの様子を窺う。
「起きろ、この野郎」
まだ呼吸も整わないが、どうにか立ち上がろうとする相棒を確認すると、赤鬼の背後に回ってフルネルソンに捕らえる。
身動きできずにじたばたしている赤鬼のどてっ腹にケビンのスピアーだ。
こうなると形勢逆転で赤鬼を二人掛かりで痛めつける展開だ。
額からの出血をものともせずにケビンが馬乗りで殴りかかる。
しかしここで暗転。
いよいよ真打の登場だ。
おどろおどろしいエントランステーマが流れ、リング上の三人は間合いを取って静止する。
照明が点くとそこには高々と抱え上げられたケビンがいた。
次の瞬間、奴の体はマットに向かって叩きつけられた。
次は俺の番だ。
しかし今度は離れた場所から稲妻で攻撃されるわけでもなさそうだし、抵抗するチャンスは十分ありそうだ。
とりあえずドロップキック。
うまく顎を捉えたぞ。
よろめいてロープにもたれたところにクローズライン。
場外に落とすと俺はコーナーポストの上から両手を大きく広げて頭からのダイビングアタックだ。
リングサイドの実況席では「カミカゼ・アタック!」とアナウンサーが絶叫している。
相手にも致命的なダメージを与えるが、自分もタダではすまない技だ。
場外で二人、リングに二人、動けないレスラーが横たわっている。
さぁどうするレフェリー。