起きねば
話がまとまったのか、三人が俺の顔を覗き込んだ。
そしてタトゥーの男が言った。
「起きろ」
少しは痛みも収まってきたし何とかしないといけない。
とりあえずそう言ってくれてるんだし、自力で立てるかやってみよう。
関節はギシギシと軋むし、筋肉はまるで水中で全力疾走しようとしているように重ったるい。
叩きつけられた背中は他人事のように感覚が遠い。
何とか中腰になったところで、以外にも赤鬼が俺の体を支えてくれた。
ブッカーの親父が言った。
「なあいいか、これは仕事なんだ。」
「あれが嫌だこれが嫌だと駄々を捏ねるんじゃない。」
いやいや、俺は駄々を捏ねた覚えは無いぞ。
どういう経緯か知らないが、仕事を請けた記憶も無いんだ。
さっきこの親父が説明してくれたように、俺が台本無視してとんでもない事になっているようだから怒っているのだろうが、じゃあ俺にどうしろって言うんだ。
少なくとも悪気は無かったことを伝えて帰らせてもらうしかない。
タトゥーが口を開いた。
「お前はこんなもんじゃないだろう」
殺気立ったオーラの向こうでその眼は意外にもかなり人間味がある光沢を含んでいる。
さっきまで悪魔のように思えた三人が、怖い先生位の位置付けまで近づいてきた様に思える。
もしかすると、さっき地面に叩き付けられたことが禊ぎだったのか?
少し緊張もほぐれて話が出来そうな雰囲気だぞ。