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恐怖

 二つのシルエットがリングに近づいてくる。

小さいと思っていた方のがっちりした影でも影でも2m以上ありそうだ。

大きい方の影はスリムだけれど、3m近くあるぞ。


 観客も俺たちレスラーも、ドン引きで事の成り行きを見守っている。

現実とCGがゴチャゴチャになったかのような時間が流れている。


 ケビンの奥歯が音を立てた。

いつもの歯軋りではない。

ガクガクと何かに怯えるような音だ。

そして、次の瞬間俺にもその恐怖が伝わった。


 こちらに近づいてくるのは、間違いなくジョンとステラだ。

小太りだが、その内側にかなりの筋肉を秘めた心優しいジョン。

俺の知っているジョンは180cmあるかないかだが、こちらに歩を進める男は2mを超えている。

そして後方を歩くステラのグラマラスなシルエットが照明にさらされる。

そこにいるのは2m70~80cmある誰も頭の上がらないおかみさん。


 もう地球人としての常識を超えてるぞ。

しかも彼女はこちらを睨みつけている。


 恐怖に身がすくむとはこの事だ。

誰一人動くことも出来ない。

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