大のプロレスファン
もう後少しだけ前に体重が掛かったら戦闘開始と言うくらい臨戦態勢のメインイベンターを、前から支えるように押しとどめている冷や汗まみれのレフェリーの動きを確認するように一瞥してマックスが話し始めた。
口元は軽く微笑んでいるように曲がっており、声にも重みはないが、眼は笑っていない。
「ちょっといいか?ヘへ 邪魔したみたいで悪いなへへへ 実は俺達は大のプロレスファンなんだよ。」
「特に俺と、ここにいるハリーはあんたのファンでな。」
「ほら」と言って革ジャンの前を開けて我らがメインイベンターのTシャツを見せつける。
ハリーと呼ばれた男は、視線をこちらに向けるわけではないが、殺気を推し量るかのようにうつ向いたままじっとしている。
後ろの四人は、爆発しそうなアドレナリンを必死で押さえつけているようだ。
「あまり歓迎したくない登場の仕方だが、ファンは大事にしなくちゃな。」いきなりタフガイの声がした。
「で、どうしようってんだ?」ちょっと怒気が含まれている。
レフェリーも大変だ。
今度はタフガイを抑えなければならなくなった。
レフェリーからの負荷が無くなったアスリートは、ハリーの前に踏み出し視線を合わせようとしない自分のファンだと言う男を至近距離で真上から睨みつけている。