スイッチが入った
どうやら爆音軍団の一味になっちまったもう一人の俺達が何をやらかすのか。
一緒にモニターを見ていたケビンの奥歯がギリッと音を立てた。
おかしなスイッチが入ったサインだ。
奴の方に目をやると、もう背中が遠ざかりつつあった。
二台のバイクが、エントランスに屯する爆音軍団のバイクの間を縫う様にリングに向かう。
リングサイドにバイクを乗り付け、サードロープの下を潜り、リングに滑り込む。
六人の男達に一人で対峙する我らがメインイベンターの両脇を固めて仁王立ちだ。
ようやくタフガイもこちらのスタンスで視殺戦に加わった。
リング上にいる男たちの中で一番小さなレフェリーが、事を収めようと間に入って冷や汗を流している。
ここで、最も殺気とは縁遠いマックスが、リングアナウンサーの方を向くと、マイクをよこせと要求した。
何を話すつもりだ。
それ以外の男達は相手に隙を見せまいと殺気立ったまま、次の展開を待つ。
もうひとりの俺達は、何故だかわからないが明らかに俺達よりデカい。
しかしこちらはプロが四人だ。
素人相手に怯む姿を晒す訳にはいかない。
と、いうか、怖さは全く感じない。
むしろどうなるのか、ぶつかって確かめてみたいぞ。