今夜のメイン
歓声に包まれて、二人の看板選手がリングで対峙している。
どちらもチャンピオンでお互いのタイトルを賭けた試合が今夜のメインだ。
赤コーナーにもたれてゴングを待つのは、筋肉の塊。
子供の頃からプロレスが大好きで、プロレスラーになるために努力を続け下積みから這い上がってきた選手。
甘いマスクや鍛え上げた筋肉だけではなく、滑舌も滑らかな上、歌や芝居も器用にこなす。
戦いっぷりは少しもっさりしているが、無類のタフガイだ。
青コーナーに佇む対戦者は長身のアスリート。
父も祖父も名選手として鳴らした所謂サラブレッドだ。
近寄り難いオーラに包まれた孤高の戦士といったところ。
どんな相手とでも、どんな試合形式でも、名勝負を見せるプロレスの申し子だ。
しかもまだ二十代前半。
ってことは、俺より若い。
団体を背負った戦いがこれから始まる。
結果次第では、今後の団体内の勢力図も変わってこようという奴だ。
ベテランのレフェリーに促され両者がリングの中央に向かう。
どちらもベビーフェイスだから、軽く握手を交わして試合開始のゴングが鳴った。
パワーと打たれ強さ、スピードと多彩な攻撃。
見かけや生い立ちだけではなく、セールスポイントも正反対のトップスターの戦いだ。
しっかり拝ませてもらおう。良い勉強になりそうだぞ。