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二度も断罪されましたが死に戻りましたので、今度は愛する人を守ってみせます  作者: 今尾曜
第一章 過去

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13

 王都に呼び出されたルーファスは、婚約どころかその場で婚姻するよう命じられ、カミラをともなって城に帰ってきた。


 ふたりが到着する日、クリスティアは部屋に閉じこもった。


 ルーファスとカミラがいっしょにいるところを見たくなかったし、己の身を守るためでもある。


 カミラはリリアナと仲が良い。


 クリスティアが罪人とは思えぬほど優遇されていると知れば、何をされるかわからない。


 次の日は早朝に雪月草の様子を見に行き、昼の礼拝に参加する以外は、なるべく部屋から出ないよう気をつけた。


 だが、そんな努力もむなしく、カミラが城に来てから五日後、ついに呼び出されてしまった。


 神殿の分室である別邸からは出られないと伝えてみたが、神官の監視付きなら構わないだろうと押し切られてしまった。


 まだお披露目もされていない領主の妻に会えると、監視役の若い神官は興味津々だったが、クリスティアはひたすら気が重い。


 会うのは数年ぶりだったが、カミラは変わらず美しく、優雅だった。


 青いドレスを身に着け、ゆったりと長椅子に身を預けているが、その姿にはかつてなかった妖艶さまで加わっていた。


 離宮で男たちと好き放題しているという噂を聞いた時は半信半疑だったが、やはり本当なのかもしれないと思えるほどの色香を放っている。


 あいさつを受けた後、神官にドアの外で待つように言い、カミラはクリスティアに目を向けた。


 今のクリスティアは、何の飾りもない生成りの服を着て、赤い髪を肩の上で短く切りそろえている。


 じろじろと上から下まで眺めてから、カミラはにっと唇を歪め、嘲笑を浮かべた。


「ずいぶんとみじめで、貧相なのね。まあ、あなたにふさわしい姿になったと言うべきかしら?」


 リリアナと同じ、いや、それ以上に攻撃的な態度にクリスティアは困惑した。


(どうして? 今までは無視されるだけだったのに……)


 その答えはすぐに明らかにされた。


「あなたの行動は、神官たちによってすべてリリアナに報告されているのよ」


(そんな……)


 リリアナは一年前にアーロンと結婚式を挙げ、念願の王太子妃となったはずだ。


 とうにクリスティアのことなど忘れていると思ったのに、いまだに見張られていると知り、背筋が凍り付くような恐怖を覚える。


(しかも、それをわざわざカミラ様に教えていたなんて……)


 もはや、これは悪意以外の何物でもない。


「罪人のくせに、図々しくもルーファスにすり寄っているそうね。体を使って楽に暮らそうとでも思ったのかしら。汚らわしい女」


「違います。わたしはそんなことはしていません」


「黙りなさい」


 カミラは立ち上がると、侍女に鞭を持ってこさせた。


「卑しい女が夫にまとわりついてるなんて、許せないわ。これは、おまえが身の程を知らなかった罰よ」


 後ろを向かされ、ひざまずくクリスティアの背中を、カミラは何回も容赦なく鞭で打った。


「くっ」


 あまりの痛みに耐えきれず、唇の間から声がもれる。


「どう? 過ちを認める気になった?」


「わたしはっ、恥じるようなことは何も、していませんっ……」


 こんな理不尽な暴力に負けたくない。


 ただその思いだけで、苦痛にあえぎながらも、言い切った。


「リリアナから聞いていた通りね。悔い改めることのない、厚顔無恥な女だって。今まではルーファスをだましてうまくやっていたんでしょうけど、これからはそうはいかないわよ。覚悟しておくことね」


 カミラは手の甲でクリスティアの頬を叩くと、部屋から追い出すよう侍女たちに命じた。


 部屋の外にいた神官は舌打ちしながらも、クリスティアに肩を貸し、モリスの研究室まで連れて行ってくれた。


「これは、どうしたのですか?」


 日頃は物事に動じない、冷静なモリスも、クリスティアの有り様を見て、さすがに顔色を変えた。


「顔は腫れているし、背中は皮膚が破れて血だらけだ」


 モリスは傷口を手早く消毒し、軟膏を塗ってくれた。


 香草入りのお湯で濡らした布を頬に当てると、温かいのに清涼感があって、とても気持ちが良い。


 安堵感がこみ上げてきて、涙が止まらなくなってしまった。


「いったい、何があったんですか?」


 カミラに罰だと言われ、打たれたことを告げてから、ルーファスには黙っていてくれるよう頼んだ。


「なぜです? こんなことは許されない。すぐにやめさせないと」


「リリアナがカミラ様に、わたしのことを悪く言ったのです。辺境伯様を誘惑したとまで思われているので、もう何を言っても信じてはもらえないでしょう。もし、あの方がわたしをかばってくださるようなことがあれば、おふたりの関係が悪くなりかねません。そうなれば、わたしはもっと酷い目に遭うでしょう」


「今だって、じゅうぶん酷いですよ」


 モリスは憤慨したが、とりあえずルーファスには黙っておくと約束してくれた。


 その夜は背中の痛みで、よく眠れなかった。


     *


 翌日、治療のためにモリスの元へ行くと、ルーファスと出くわしてしまった。


(この時間なら、大丈夫と聞いていたのに……)


 できる限りさりげなく挨拶したのだが、クリスティアの顔を見た途端、ルーファスの表情がみるみる険しくなった。


「その顔はどうしたんだ?」


(しまった)


 赤みは収まってきたものの、まだ顔の腫れはひいていない。


「あー、すみません。まさか、ルーファス様がこんな朝早くからいらっしゃるとは思わなくて」


「モリス……」


「ああ、話は治療の後にしましょうか」


 何か言いたそうなルーファスを部屋の外に追い出すと、モリスは手早くクリスティアの傷を治療した。


「君は何も心配しなくていい。悪いようにはしないから、僕にまかせてください」 

 

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