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貧乏魔女は魔王に捕まる

 貧乏魔女アロンは、拘束呪文で拘束されている。しかし、魔女は何故か堂々と魔王の前であぐらをかいて眠っているのだった。


 「お前!寝るな!」


 誰かの怒声が魔王城に響き渡る。

 ふぇっ?な〜に?と、ぐぅースカ寝ていた一人の魔女は目を覚ます。


 「何?では無いは!貴様、我を侮辱してるのか!」

 魔女アロンはそれに対し興味なさそうに目をこすりながら言う。

 「侮辱?てかあんた誰なわけ?」


 「誰かだと!貴様我を知らぬと申すか!」

 「知るわけないでしょ、あんたみたいなどこぞの馬の骨かも知らないおじさん」

 「あっおじさん、だと」


 魔王は衝撃のあまり言葉を失う。初めて言われた言葉に少し傷つく。


 大魔王ゾル•グーランは、目の前の偉そうな小娘に対して、怒りを通り越してもはや呆れを感じていた。服装は別としても見た目は可愛いのに残念だ。ため息を吐き、咳払いをする。


 「まぁ良い。我を知らぬと言うのなら教えてやろう。我は、世界にその名は知らぬ七星魔族の頂点に君臨する者。大魔王ゾっ、ぐぅ〜っ貴様!我の話を聞かぬか!この小娘が!」


 魔女は魔王城の中をキョロキョロと目を輝かせながら見ていた。目の前の魔王には目もくれようとしていない。しかし、その罵声に反応したアロンは魔王を睨みつけながらそちらを向く。


 「小娘とは失礼ね!私はね立派な魔女なの」

 魔王は爆笑する。

 「そんなボロくそな格好でか?笑わせてくれるわ」

 「そんなボロくそな格好とは何よ!これはね、私のファッションなんだからバカにしないでくれる」


 実を言うと魔女アロンはとても貧しく、今着ている黒い魔法着もおばあちゃんからのお下がりなのだ。所々に仕立て直した後がある。しかし見た目やルックスは悪くない。悪くないどころかとても可愛い容姿をしている。


 「それにあんた!か弱い女の子の見た目を侮辱したはね。セクハラよ、セクハラ!」

 「セッ、セクハラ?」

 セクハラとはなんだ?と魔王は少し困惑する。

 「それよりあんたこのお城の主人なのよね。もしかしてお金持ちさんだったりする?」


 するといきなり、アロンの背後から剣が突きつけられる。


 「貴様!さっきから聞いておれば何なのだ魔王様に対して!死にたいのか?そんなに死にたいなら私が殺してやろう!」

 魔王が手でそれを制する。

 「まぁよせ、ヴァンパイア。この娘は後で我が手を下す」


 「しかし」

 「よいものはよい、下がれ」

 ヴァンパイアは無言で後ろに下がる。しかしアロンはそんな会話はお構いなしに言う。

 「ねぇーお腹すいた。それにそろそろこの暑苦しい拘束呪文解いてくれない?」

 相変わらず図々しい態度の小娘だ、と魔王は額に手を当てる。


 「それは出来ん」

 「何でよ!何でよ!何でよ!えっ、もしかしてあんたそう言う趣味?拘束して楽しんでるんでしょ!だから最近のおっさんは」

 「あーもううるさいわ!何だ!腹が満たされて、拘束を解けば、その偉そうな口は閉じるのか!」


 「うん」

 くぅー。と魔王はこのうざったい小娘の口が閉じるならと拘束呪文を解いた。

 呪文が説かれるとアロンは、立ち上がり背伸びをした。うー気持ちいと言った後、またその場にあぐらをかき座り込む。

 「ねぇーご飯は?客人くらいもてなしなさいよ」


 魔王はもうこの娘にあーだこうだ言っても仕方がないと観念しためため息をつく。

 「はぁー、何が食べたいのだ」

 「えっ!好きなの選んで良いの?じゃあねー、バナナ!」

 はぁ?と魔王は疑問を持つ。こんな強欲そうな娘がバナナとは意外だ。しかし。


 可愛い子にバナナが欲しいといわれると何かそそるものがある。

 「バッ、バナナが好きなのか?」

 「そうよ」

 魔王はそう聞くと、後ろに自分の妻がいるにもかかわらずつい口を滑らしてしまった。

 「そうかー、なら我のバナッッ!あぢぃー!」

 「あら、すいませんゾル様、つい手を滑らせて紅茶を溢してしまいました」


 ゾル・グーランの使い魔、また妻でもあるミレディーナは真っ黒なオーラを放っている。魔王はこの世で一番怒らせてはいけない人を怒らせてしまった。そして不気味な微笑みを浮かべて言う。

 「今、お拭きしますので」

 「いっいや、よい。我が拭く」

 「あー、そうですか。ではゾル様、また後程私とお話ししましょうか。私はちょっと外に息抜きに行ってまいります」


 そういうとミレディーナは重たい扉を片手でドカッ!と開けるとそのまま出て行ってしまった。

 その後いろいろあり、外からは雷なのかよくわからない音がしばらく響いていた。

 魔王は少し天のほうを見上げ、この後どうしようかと頭の中で想像したのだった。


 


 「わー!久しぶりのバナナちゃん!頂きまーす」

 もぐもぐと食べるその姿はとても愛らしい。と魔王はアロンが食べる姿にしばらく見惚れていた。


 アロンはバナナを3房食べ終えると、ようやくお腹がいっぱいになったらしい。その後、水をゴクゴクと飲み干す。

 「ぷぅっはー、久しぶりにこんなにお腹いっぱいになったよー、ありがとう!えーと名前は?」


 「くぅっ、ゾル・グーランだ」

 「ゾル・グーランって言うんだ。面白い名前」

 あれ?でも待てよとアロンは思った。ゾル•グーランってどっかで聞いたような、と考えていると唐突に。

 「そなた、我の嫁にならぬか?もし我の嫁になれば毎日お腹いっぱいご飯が食べられるぞ!」

 

 「えっマジで!なるなる!」

 「そうか!なるか!ぐぅあはっはっはー」

 その会話に周りの配下達は皆呆れた。あんた早くミレディーナさんにしばかれろと。しかしそれは現実になりそうだった。


 ちょうどそこに先ほど出て行ったミレディーナが戻って来ていた。


 「あら、ゾル様?私のことがそんなにお気に召されませんか」


 アロン以外の周りの全員は一瞬でその場で固まった。


 ミレディーナは両手に大釜を構え、猛獣のごとき目は魔王を直視で射抜いていた。


 魔王は冷や汗どころか、今にも心臓が飛び出しそうなくらい焦っていた。


 「あっはっはー・・・、ミレディーナ。戻っていたのか」

 「えー先ほどから」

 あれこれあって、魔王の頭にはお団子が四つ乗っかった。


 


 先ほどのヴァンパイアの懐からある一枚の紙がアロンの前に落ちる。何これ?とアロンはそれを拾い上げる。


 そうして、ようやく思い出す。あれはいつの日か、ダレアモールギルドの討伐依頼掲示板に貼られていた依頼書だ。

『大魔王ゾル・グーラン 討伐金 30億ドルニー』と。

 

 わおー!こんなところにいたんだ超ラッキー!と星焔の魔女ソリュート•アロンは魔法で杖を取り出す。今ここでま王を倒せば30億ドル二ーゲットー!そしてその杖を魔王に向ける。


 「思い出したわ!あんた賞金30億ドルニーの大魔王ゾル・グーラン!」

 魔王はえっ?いきなり何と思ったが、それよりも自分に賞金30億ドルニーもかけられていることに驚いた。

 

 すると魔女の杖にどんどんと光が集まり始める。

 「そういえば、まだ自己紹介をちゃんとしてなかったわね」

 周りの空気が一変する。

 「私は星焔の魔女ソリュート•アロン!」


 魔王達は嘘でしょ!と言う顔で魔女を見る。まさか、そんなバカな。星焔の魔女は確か130年前に、邪竜王バクタ・ガイヤードの攻撃で死んだはず。こんなところにいるはずがない。しかし、この魔力は!


 魔王達は急いで魔女を攻撃しようとしたが遅すぎた。その時にはもう、アロンは呪文を唱えていた。

 「クレンセント・バーブレイズ!!」


 ドカーン!!と言う響きと共に、大魔王ゾル・グーランは配下ともども白い閃光に包まれ、城あっあっあっけなく消えてしまった。


 「ゲホッゲホッ、すごい煙ね」

 魔女は自らを防護結界で守っていたため無事だった。城が跡形もなく無くなった焼け焦げた土地に、1人ポツンとたたずむ。


 その後魔女は、30億!30億!とウキウキしながらそそくさとダレアモールギルドへと直行するのだった。


 


 「はぁー?意味わからないですけど!私です!大魔王ゾル?何ちゃらを倒したのは!」


 ギルドのお姉さんは困り顔で、周りに助けを求めたそうだった。


 「しかしですね。確かに大魔王ゾル•グーランの消滅はこちらでも確認しましが」

 ギルドのお姉さんは目の前にいる少女を引き気味にみる。

 

 「あなたがあの星焔の魔女だといわれましても、あの方はもう130年前の戦いで」

 「だから!何度言ったらわかるの!星焔の名は私がおばあちゃんから受け継いだの!しかもおばあちゃんまだ生きてるし!」


 「だとしても、ギルドではあなたが倒したという証拠が確認できませんので報酬は出せません」


 何が証拠よ!と叫ぼうとしたが、これ以上しつこくすると遠くからこちらを見ている兵士に絡まれそうだったので、押しとどめる。


 そしてアロンは、周りの痛いやつ目線を気にする様子もなくその場を後にした。


 「何なのよ!みんな私が星焔の魔女だってこと信じてくれないのよ!」


 ふん!と石ころをけりながら懐からバナナを取りだす。魔王城からパックって来たバナナがまだ一本残っていたのだ。


 今夜のおやつー!とバナナの皮をむき、いざ食べようとした時。


 クワー!といきなり空からカラスがアロンに襲い掛かってきた。そして最後の大事な一本をカラスにパクられる。


 「うぁー!なにすんのよこのカラス野郎!私のバナナ返せー!」


 アロンは、箒を取り出してすぐさまカラスを追いかける。アロンはしばらくカラスを追っかけたが拘束魔法も当たらずそのまま逃がしてしまった。


 「私の、バナナが・・・」

 食べ物の恨みは恐ろしい。あのカラスめ!と思いながら、あきらめて地面に降りる。


 そうしてアロンはがっくりと悲しそうに、日が沈む太陽の方向に向かって歩き始めて行くのだった。

 

最後まで読んでくださりありがとうございました。


ぜひ面白いと思った方は、星5をつけてくださると大変うれしいです。


面白くない、改善が必要と思われた方は星1でも構いません。


下のほうにお進みいただけたら☆☆☆☆☆の欄がございます。


今後とも面白い作品を投稿していきます。


最後に気になる、と思った方はブックマークもよろしくお願いします。

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