逆ハーエンドの後どうするつもりかですか?こうするんです!
私は誓ったんだ。みんなを絶対に幸せにするって。そう、たとえ……になってしまったとしても!
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「やっと卒業だね」「寂しくなるな」
「卒業したらどうするの?」「俺は領地に戻って……。」
ここは学園の卒業パーティ。
シャンデリアはきらめき、音楽は軽やかに流れ、テーブルには山盛りのスイーツ。ドレスはふわふわキラキラ、誰もが笑顔で、これぞ乙女ゲーム世界の集大成といえる美しさ。
乙女ゲームのヒロインに転生したアリスは三方から伸びてくる極上のデザートを選んでパクリ。
「ああ、幸せ……。この世界に転生して本当によかった……。あとは、逆ハーレムで平和に子育てして、老後は田舎の別荘でのんびり……」
夢見心地のまま、王子アルフレッドの元へ視線をやると、彼はデザートを持って輝くように微笑んでいた。もうすぐ結婚予定の“恋人”である。もちろん、ほかの恋人もあと二人いるけれど、それはそれ。これこそが逆ハーレム。夢と戦略の結晶だ。
しかしその時だった。
「あなたの逆ハーレムも終わりよ」「そうよそうよ」「諦めなさい」
アリスが声のする方を向くと、三人の令嬢がアリスの方を睨んでいた。
侯爵令嬢ローザとその取り巻きの伯爵令嬢エリーとシャロットである
侯爵令嬢一人に、伯爵令嬢が二人、男爵令嬢であるアリスから見ればとても高位な方である。
普通なら恐縮して、逃げるのが一番である。そう普通なら。
でもアリスは違った。そのために準備してきたから。
「ふふふ、どうされたんですか?まるで何か泥棒猫を見つけたみたいな顔をされていますよ」
どうやら無意識に笑顔になっていることに気がついていないようであった。
笑顔を見てカチンときたようでバチんと扇子を広げてアリスに向けると、侯爵令嬢ローザは叫んだ。
「お黙りなさい。私たちの婚約者を心を盗んだつもりかもしれないけど、あなたの悪事を知ればすぐに愛想をつかすわ」
「そうなんですか?私悪事なんでしていないのですけど」
首を傾げて逆ハーメンバーを見ると、逆ハーメンバーも頷いた。
「アリスは俺たちのことを本当によく考えてくれているんだ」
「そうだ、この天使のようなアリスが悪事なんてするわけないだろ」
「本当に人を見る目がないとはこのことですね」
普通ならライオンでも逃げ出すような三人からの視線を受けて、伯爵令嬢の二人は侯爵令嬢ローザの後ろに隠れたが、ローザは微動だにせず微笑んだ。
「ひどいですわ。アルフレッド様。私アルフレッド様のために調査しましたの」
そう言って、パラパラと写真をばら撒いた。
参加者がばら撒かれた写真を見ると
「おい、これ。アルフレッド殿下とアリス嬢がホテルに入るところだ」
「それだけじゃないぞ、こっちは宰相の息子のフィリップ様とアリスだ」
「こっちには騎士団長の息子ロイ様とだ」
そう、侯爵令嬢は、アリスが複数人とベッドインしていることを調査したのだ。
何人と肉体関係を結ぶような女だと分かれば目を覚ますはずだと考えたのだ。
しかし、
「ああ……これはあの時の写真か。楽しかったね」アルフレッドが微笑み
フィリップもロイも写真を懐かしみはしても、何も驚かなかった。
侯爵令嬢ローザは、思ったような反応がないことに驚いて、問いかけた。
「どういうこと?アルフレッド様。その女は何人もの男と同時に肉体関係を持っているのですよ。生まれてくる子なんて誰の子かわからないのです。それでもこの浮気女が良いのですか?」
周りの参加者も概ね同じような感想だった。
「そうだよな。いくら可愛くても複数と付き合うような女はパスだな」
「だな。生まれてきた赤ちゃんを見たら違う髪の色とか」
「それうける」
しかし、ヒロインアリスと逆ハーメンバーは違った。アルフレッドから差し出されたイチゴのタルトを一口かじると、
「甘いですよ。このタルトより甘いです。そんな問題はもう解決済みです」
と笑った。
「なんですって」
「そうだ。ローザ、ここで宣言しておこう。3ヶ月前私とお前の婚約は破棄されている。お前はもう婚約者ではない」
アルフレッドに続いて、残りのメンバーも元婚約者と婚約破棄してあることを宣言した。
「アリスと肌を重ねたのは、婚約破棄後だ。したがって、これは浮気ではない」
「でも同時に複数と付き合うのはおかしいですわ。それでも良いのですの?それは一夏の恋にして私たちのところにお戻りなさい」
侯爵令嬢ローザは勝ち誇ったような顔をしてアリスの方を向いた。
しかし、
「だが断る!」アルフレッドはキッパリを返した。
「ですが、あなた達はそれぞれ一人息子なのですよ。血を残さなくて良いのですか?このアバズレから生まれてくる子は誰の子か分かりませんよ」
それでも引き下がらないローザ。
ここでアリスはネタバラシをすることにした。
「ローザ様。子供のことは心配不要ですわ。なぜなら……」
彼女はすっと立ち上がり、周囲に視線を送りながら、にっこりと笑った。
「逆ハーレムメンバー、全員ただいま、妊娠中でーす☆」
それを合図に、逆ハーメンバーは体の周りを覆っていたマントのようなものを脱ぎ去った。
すると中から出てきたのは……。
王子の腹がぽこりと盛り上がっていた。
宰相の息子がマタニティローブを着ていた。
騎士団長の息子が、つわりに効くハーブティーを飲んでいた。
「……そ、そんな……。アルフレッド様が妊娠なんて……そんなバカな……」
「どうして……どうしてこうなったの……?」「ロ、ロイ様……」
「ふふっ、意外と似合うでしょ?逆ハーメンバーは妊娠してもイケメンなの」
アリス渾身のドヤ顔である。
「ど、どういうこと?」ローザが震えながら声を出した。目で見ても目の前のことが信じられないようであった。
「ふふふ〜。魔法で男性でも妊娠できるようにしちゃいました。てへ☆」
「それじゃあ、まさか……。」
そして騒然とする元婚約者たちに、アリスは自分の下半身をチラッと見ると、いつもの天使の笑顔で囁いた。
「想像の通りよ。羨ましい?」
元婚約者たちが崩れ落ちる中、アリスはうっとりとお腹をさする三人を眺めながら、感慨深げに呟いた。
「ほんと、ここまで来るの、大変だったんだから……」
==約一年前==
「アルフレッドもフィリップもロイも婚約者からの愛は貰えていないし、今後もない。何故なら彼女達は彼らの地位だけが目当てだからね。でもそんなの許せない。必ず私が全員を愛して幸せにするんだから」
一人で紅茶をすすりながら、アリスは真剣にノートに案を書いていた。
「問題は逆ハーエンドをした後どうするかよね。貴族社会において誰の子かは非常に重要だわ。もし単純に進めるなら、一人目が生まれるまでは固定の一人として、生まれたら、次のメンバーとか。いやでも時間がかかりすぎる。その間、待っていてなんてひどい」
ではどうすれば良いのか、アリスは何度も案を書いては消していった。
「どうすれば良いのよー。ああ、もう私が男だったらいいのにー」
そう叫んだ後、ハッと気がついたよう立ち上がった。
「そうよ、逆ハーメンバーに子供を産んで貰えば良いじゃない!」
==半年前隣国にて==
「なんだ何が起こっている?」
「わかりません。何か強大な魔力を持った存在が接近しています」
王城の警備兵達が混乱している中その存在は姿を現した
「やっほー☆ごめんね。欲しい魔導書があるから占領しちゃうね」
攻略知識をもとに最強武器防具見つけ装備したアリスである。
「なんだと」王の親衛隊長が反撃しようと前に出ようとすると
アリスは軽く手を振った。
そして、城の半分が消し飛んだ。
「あ、心配しないでね。城の中にいた人はワープさせてあげたから。私無駄な殺しはしたくないんだー。でも、そうしないといけないならしちゃおうかな。どうする〜?」
答えはもちろん1つだった。
そして国に戻り、王に交渉を持ちかけ、隣国の支配権と逆ハーメンバーとの結婚許可をもぎ取った。
それは王だって隣国を一人で滅ぼせる女は怖いんだ。
==3ヶ月前==
「前の婚約者との婚約も破棄されたし、これで私たち自由ね」
「うん」「ああ、そうだな」「もちろんだ」
「ねえ、アルフレッド、フィリップ、ロイ、子供欲しくない?」
突然の言葉に飲んでいた紅茶を吹き出して、場面を想像して赤くなっていく逆ハーメンバー。
「あ、間違えた。赤ちゃんを産んでほしいの。てへっ☆」
「「「どういうことーーーーー」」」
流石に逆ハーメンバーもこれには驚いたが、謎の説得力と、最新の魔法による快適妊娠生活のプレゼン資料(アリス作)により、あれよあれよと懐柔されたのだった。
==そして現在==
「ふふ……完璧なプランだったわ」
アリスは妊娠中の彼らの肩をぽんぽんと叩き、そして彼らの元婚約者たちに目を向けて誇らしげに笑った。
「これが逆ハーの唯一の最適解よ。私たち最強の“逆ハーファミリー”で新時代を築くのよ!」
そして彼女は静かに言った。
「ねえ、あなたたちも同じようにできるわよ」
会場内でゴクリと唾を飲み込む音がした。
そう、これは新時代の始まりだった。