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東方訪問記  作者: 明鏡止水
凛編
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4-2 亡霊剣士

主の住まう館に務める若き剣士。

生前、類まれなる剣の腕を持っていた人間の亡霊が、偶然冥界に迷い込んだ生きた人間に取り憑き、意識と肉体を支配したもの。

生真面目な性格をしており、部外者や主の命令に抗わんとする者に対してはかなり攻撃的になる。

人間の肉体を持ちながら不死身だが、肉体が著しいダメージを受けると本体である霊魂が姿を見せ、これを破壊すると殺害できる。


道中では、複数の霊魂を見かけた。

凛は、ちょくちょくそれらに声をかけた。…もっとも、声をかけるというよりは手を伸ばして話しかけるといったほうが正しいが。


「お姉さん、見かけない顔だね。死んでるようには見えないけど…妖怪かい?」


「いいえ。私は…外の世界から来たのよ」


「外か。今どき珍しいな。なんだって冥界に?」


「ちょっと人探しでね」


「そっか。まあ気張れよ」


他愛もない会話を交わし、目的の場所へ向かう。




「ところであおいさん、屋敷って言ってたけどどんなところなの?」


「まあ…なんというか、普通の大きめの屋敷よ。屋根がピンク色で、亡霊が住み着いてるのを除けば、ごく普通の屋敷だったと思ったわ」


「そうなの…?」


「そう。この世界でほぼ唯一の、まともな奴が住んでる建物。確か、この世界を統べる亡霊が住んでたと思ったわ」


「この世界を統べる…」

ここまで見てきた限り、この世界はとにかく広い平原が広がるばかりで何もなかったし、住人も人魂ばかりだったのだが…こんな世界を統治して、どうするというのだろうか。


「まあ、正直統治する価値がある世界であるかは微妙だと思うけどね。ま、とにかくでかい山の上にある建物だからわかりやすいと思う。さっさと見つけて、お話を聞きましょう」



それからしばらくして、それを見つけられた。



「あ、あれね」

小高い山の上にある、大きな館。

それはあおいの話に聞いた通り、ピンク色の屋根をした大きな屋敷だった。



「あったあった。…白玉楼、こんな形で来ることになるなんてね」

乗り込む前に、とあおいはこの場所について少し詳しく話した。

「ここにはね、数百年前だか数十年前にある桜の木の下で幼くして死んだ…っていう人間が亡霊になったのが主人として住んでるの。で、まあ…悪い奴じゃないんだけど、他人から命を抜き出して食う上に大食らいでね。なんというか…ちょっと危ない奴なのよ」


「まあ、そうでしょうね。そんな死神みたいな力を持ってる時点で、まともな奴ではなさそうだわ」


「死神って…まあ確かにそうだけど、この世界の死神ってのはノワールのとは違うんだけどね。で、あの屋敷なんだけど…入るのにもちょーっと、面倒があるのよね」


「え、まだあるの?」


「ええ。むしろ、ある意味こっちが本当に面倒かもね。あの爺さんの話にもあったけど、ここには妖夢って奴がいるの。確か、庭師ってことでいたと思ったけど…ほぼ名ばかりで、実際は雑用をこなしてると思ったわ。まあ他に人がいないし、しょうがないか」

凛はそれを聞いた瞬間、昔王城の侍女として働いていた時のことを思い出した。

当時の侍女は数が少なく、雑用と一括りに言ってもその内容は多岐にわたり、朝から晩まで異様なまでに酷使されたものだ。

人が少ないと使用人が酷使されるのは、どこの世界でも同じらしい。


「それ、どんな人なの?」


「何ていうか…生真面目で融通が利かないって言うか、主の命に忠実過ぎるっていうか。言われた事を、何が何でも遂行するのよ」


「まあ、それだけ聞くとそんな変な感じはしないけど…」


「その忠誠心が、限度を守ったものであればいいんだけどね。命令であればどんなエグいことでもやるから、ちょっと問題なのよ」


「なるほど…ね」


「まあ、さすがに本当に何でもやるわけじゃないけどね。一応人間だし…少なくとも、どっかのイカれたメイドよりはまだマシよ」


「誰よそれ」


「…。まあいずれ会うと思うから、その時までのお楽しみってことで」

そんな会話をしているうちに、屋敷の門の前についた。

階段がやたら長かったが、話しながらだったからかさほど苦にならなかった。




「で、ここからどうするの?」


「慌てなくたって、向こうから来るわよ」

その直後、突如斬撃が飛んできた。

凛はすぐに飛び退いて回避し、斬撃を飛ばして反撃を見舞う。

「[零下閃]!」

この技は氷属性の遠距離攻撃であり、外れても周囲に凍結効果をもたらし行動速度を低下させることができる。

剣の技だが、刀にも同名の技が存在する…凛はどちらも使えるが、今回は剣を使った。


そして、攻撃者はすぐにその姿を見せた。

「ああ、出た出た…」

あおいが憎々しげに笑う。


髪は短く、先ほど出会った老人と同じく白い。

瞳は黒く、凛々しい。

背は低く、手足も短いが、その手に携えた刀はよく使い込まれているのがわかる。


「あの刀…かなり使い込んであるわね」


「…」

女は何も言わず、2人を険しい顔で見てきた。


「こんにちは、ね、妖夢。あたし達は…まあ、言うまでもないか。どうせ、聞いてるでしょ?」


「…」


「でさ、あんたのご主人様と話がしたいの。だからさ…通してくれない?別に、あたし達はあんた達の敵じゃないから」


「…」


「まあ、信じられないのはわかるわよ?けどね、生憎と今はあんた達とバトってる場合じゃないの。…ああそうそう、ここによそ者の男が来なかった?二人組の」


「…」

何を言っても答えない。


「…ああそう。なら、仕方ないわね」

あおいが武器を出すと、女はヒュッと刀を振るった。

高速で斬撃が飛ぶ。あおいは素早く結界を張って防いだ。

目つきと今の行動からして、話す気はなさそうだ。


「薄々こうなるんじゃないかとは思ってたけど…凛さん!この死にぞこない、適当にシバきましょ!」


やりたくはないが、このままいてどうにかできることでもなさそうだ。やむを得ないだろう。

凛は改めて剣を構えた。

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