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東方訪問記  作者: 明鏡止水
姜芽編
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8-7 終局

「姜芽…その斧は…!?」


「わかるだろ?ここの力と俺の力を掛け合わせて放った。正直一か八かだったけどな!」


「姜芽…!」

龍神も直ぐに飛び上がり、異形の方を見る。

花びらの内部には、ぐちゃぐちゃになった異形の残骸が広がっていた。

「決まったな…」


「…いや、見ろ!」

異形の台座となっていた柱がない。

「何かおかしい。まだあいつは生きてるぞ!」

あたりを見渡す。


「!」

死角から何かが突っ込んできた。

二人がかわすと、それは空中で止まりこちらを睨む。

「うわ…」

ちぎれた下腹部から紫の血を滴らせ、充血した目をぎらつかせるモノ…。

「本当に、まだ生きてたのか」

異形は腕を総動員し、龍神に襲いかかる。

素早く刀を横に持って二本の腕に食いこませ、蹴りを入れて突き放そうとしたが、残りの腕に足をつかまれた。結果として、両手両足を封じられた。

異形は素早く口を開け、龍神の腹を食いちぎった。


姜芽は魔弾の構えを取ったが、異形が龍神を向けて盾にするため撃てない。

「ちっ…!!」

さらに脚による攻撃で、姜芽は先ほどまで異形が鎮座していた花びらの上に叩きつけられ、胸と腹を脚に貫かれた。

「がはっ…!」

姜芽は血を吐き、息絶えた…


それを見た異形は、

「残るはお前だけだ。お前たちは、私のものにしてやろう…未来永劫、私の糧となるがいい!!」

龍神を丸呑みせんばかりに口を大きく開けた。










「おっと、待ちな!」


姜芽は、余裕を湛えた笑顔を浮かべて立っていた。

その体には、傷はまったくついていない。

「っ…姜芽…!」


「…さっきからお前たち、どうやって…!」


「お前のお陰だよ…」


「なに?…まさか、貴様…!」


姜芽は、無言でにやりと笑った。

前もって、復活の術を使ってあった。そして、術で復活する際は全快する。


「おのれ…」

異形は龍神を放し、姜芽に飛びかかった。

「なら、復活も出来ないほど潰してくれる!」


「おっと!」

姜芽は瞬間的に結界を張り、迫りくる異形を吹き飛ばした。


「そうそう、さっき面白いことを思いついたんだ。お前さんらは、本当は《《ちょっと変わった方法で》》戦うらしいな。…なんか面白そうだったから、俺も考えてみたぜ!」

姜芽は白く薄い板状のものを作り出し、それを消して手に白い光をまとった。

異形は最初それが何かわからないようだったが、すぐに気づいて手を伸ばした。

「それは…まさか!」




姜芽は異形の手を回避し、それらしくポーズを取って言い放った。

「幻法 [悪姫滅却]」


光の帯が3本現れ、そのうちの2本が輝夜の体を縛り、締め上げた。


「ぐっ…!!」


そして、残りの一本が輝夜の頭のてっぺんから足までを貫いた。

「お…お前、なぜ…それを…!!」


「なんでだろうな?…龍神、見たか?」

ドヤ顔で見てくる姜芽に、龍神はグッドサインを出して答えた。

「…ああ、見たよ。なんちゃって…って感じで、カッコよかったぜ!」





輝夜は姜芽の一撃でかなりダメージを負ったらしく、地上に下りてきてふらついている。

「うう…お前たち、許さない…許さない…!!」

叫んで襲ってこようとするが、踏み出してもすぐに倒れてしまう。

「龍神!」


「姜芽!」

二人は同時に浮き上がり、姜芽は右手を左肩の上あたりに構え、龍神は両手を精一杯目の前に伸ばす。

そして…


「「地相術 [ルーメン・ジャッジ]」」


まばゆい光が降り注ぐ。

輝夜の体は、日光を浴びた吸血鬼のように少しずつ紫の灰になって天に登ってゆき…

やがて跡形もなく蒸発した。









再び激しい地震が起こる。

「またこれか…!」


「いや、さっきとは違うっぽいぞ…!」

輝夜が鎮座していた花は枯れて崩れ落ち、地面が割れ始める。

「これはまずい…すぐに地上に戻ろう!」


「ああ…とりあえず、最初ここにきたとこに!」


「あんな遠くまで…!?」


「他に戻れるあてはないだろ!」


「ある!」

誰かの声がした。

「え?」


「こっち!」

空中に空間の裂け目が現れ、そこから声が聞こえてくる。

「!?」


「さあ、早く!」


「あ、ああ!」

姜芽は訳もわからずに裂け目に飛び込んだ。

龍神も後を追う。




その数秒後、月の都は崩落した。




 

気づくと二人は地上、山の麓にいた。

「ここは…」


「無事だったのね!」


「…あんたは!」

そこには、生き残りの蓬莱人が。


「見て…」

彼女は空の一点を指差す。

(あけぼの)の空に沈みかける月。

その頂部が砕け、無数の欠片が飛び散っているのが見えた。


「月が…!」


やがて、砕けずに残った部分は地平線に隠れた。

そして、反対の方向から日が昇る。

全てが、陽の光に照らされてゆく。

「ああ…」


「おお…こりゃまさしく《《砕月》》だな」

龍神が、どこか皮肉っぽく言った。


「ありがとう。あなた達のお陰で、危険は去った。あの恐ろしいウイルスも、姫様と共に消えた。本当に、本当に…」


「それ以上言うな」

龍神が、肩をぽんと叩く。

「あんたの気持ちは俺にはわからん。けど、これだけは言える。ウイルスの力に染まった時点で、奴らは奴らじゃなくなってた。あんたは月の連中の中で唯一、正しい道を選んだ。ただ、それだけさ。だから、泣く事はない」


「でも…あの方がいなければ、私は…」


「生き甲斐がない、ってか?それは違うと思うな」

姜芽の発言に驚き、彼女は彼の方を見る。

そして、龍神が微かに微笑んだ。

「確かに、あんたのお友達はいなくなった。けど地上には、あんたを頼ってくれてる奴らが沢山いるじゃねえか」


「…。でも、これから私は1人…永い孤独を、どうやって…」


「それは心配ご無用!地上にも、お知り合いの化け物どもがいるだろ。第一、今までの数ヶ月も1人でやってきたんだろ?ならイケるさ。過去の事とはきっぱり決別して、これからはあんた自身の人生を生きな」


「その通りだ。何、大したことじゃあない。あんたはただ、故郷に帰ってきて、仕える相手が変わっただけだ。あ、そうそう。そんな事する気はないと思うが、くれぐれも孤独を紛らわすために人間に"例の薬"を飲ませる、なんて事はするなよ?」


「大丈夫よ、あれの作り方はもう封印した。こんな忌まわしい存在は私だけで十分。ありがとう、私があなたに心を治療されるとは思ってもなかったわ」


「いつぞやの借りを返しただけだ。さて…そろそろ顔を見せてくれませんかねぇ?」

龍神が無人の空間をにやけ顔で眺めると、空間が裂け、賢者と呼ばれる妖怪が現れた。

「私の存在がわかる上にその言い方…貴方、まるであの巫女みたいね」


「いやいや、俺はただの人殺しさ。あいつとは違う。勿論、ガチのバケモンのあんた達ともな」


「それで言うなら、貴方達も怪物よ?」


「…まあ、否定はしない。けど、姜芽までまとめられるのはちょっと気に食わないな」


「あら、そう?でも貴方の相棒さんは、私には彼女と同じように見えるのだけど?」


「?俺が?」

姜芽は自分を指差して言った。


「ええ…貴方は、目付きがどこかあいつに似てる。どんな強敵であっても、諦めずに立ち向かう…そして、強くて頼もしい友人がいる。…そっくり」

果たして、誰の事なのだろう。

姜芽には、わからなかった。


「貴方達には感謝しているわ。月の奴らはもういない。私が全てを支配できるのだから…」

賢者は、妖しげに笑った。


「おいおい、物騒だな。ま、あんたにそれを本当にやらかす気があるかは知らんがな」


「言ってくれるじゃない。ま、とりあえず貴方たちとはこれでお別れね。貴方たちの世界まで、送ってあげる」


「本当か!?」


「ええ」

賢者はそう言って、一際大きな裂け目を作り出した。

その奥には、姜芽たちのシェアハウスらしきものが見える。

「おぉ…!」


「つくづくすげえな。そんじゃ、俺たちは帰るぜ」


「待って!」


「え?」

二人を呼び止めた彼女は、姜芽の手を取って言った。

「いつか…また来てね?お礼をさせてほしい。何百年後でも、何千年後でもいいから…」


「…ああ、きっとな」

この世界に来ることは、もうないだろう。

だが、彼らも人生は長い。見込みは薄いが、もしかすると。


そんな2人の様子を、龍神はニヤニヤして見ていた。

「ほお?その様子だと…お医者様、あんたまさか…?」


彼女が龍神を睨みつけると、「おっと、失礼」と惚けた様子で口を押さえた。

「さあ、帰りなさい。あなた達にも、大切な人がいるのでしょう?」


「ああ…二人とも、じゃあな!」

姜芽は裂け目に消えた。


「まあまあ面白い幻想入りだったぜ?今度来る時は、ちゃんと招待してくれよ?」

龍神は裂け目に足を入れ、振り向いて言った。

「それ、意味わかって言ってる?」


「一応な。…そんじゃ、あばよ!」

龍神もまた、裂け目の向こうへと消えた。











こうして、惨劇は終わりを迎えた。

しかし、これまでのどんな事件よりも深い爪痕が残った。


そして、今回の事件を起こしたのも、事件を解決したのも、この地の者ではない。

それを知る者は数少ないが、彼女らのことを知らない者は少ない。


彼らは、今日も復興に精を出す。

もう二度と、あのような惨禍が起きない事を願って…。


「…と、俺の話はここまでだ。どうだった?」


「どうだったって…まあ、そこそこ面白い話だったんじゃない?」


「そうか?」


「逆に聞きましょうか。あんたにとってはどうだったのよ?」


「うーむ…ま、それなりには面白かったよ」


「ならよかったんじゃないの?有名ゲームの世界に行って、しかもダチが向こう風のオリ技をかますのを見てくるなんて、なかなかない経験だと思うけどぉ?」


「ふん。まあ顔を見てない奴が結構いたとか、なんか気に入らない展開があったとか、不満はあったがな」


「まあそうでしょうね。けど、それ思ったのはあんただけじゃないから」


「ほう?てことは?」


「お察しの通りよ」


「ほほう…お前も幻想郷(あっち)に行ってきたんだよな?楽しい楽しい幻想入り、話してみろよ」


「言われるまでもないわ。…言っとくけど、あたしのはあんたの以上に刺激的で楽しいわよ?」


「へえ?期待させてもらおうじゃんか」


「ええいいわよ、是非そうしてちょうだい。マジのガチで、本当に最高なんだから。あたし…いや、あたし達の"幻想入り"はね…」







姜芽編ストーリーは以上です。

ここまで読んで下さった方々、ありがとうございました。




一時期更新が途絶えてしまいましたが、まあなんとか毎週更新を続けてここまで来られました。


次回とその次は、キャラや設定の解説パートにする予定です。




なお改めて記載しておきますが、本作はあくまでも一種のブラックジョークであり、原作様を侮辱ないし誹謗中傷する意図は一切ありません。


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