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東方訪問記  作者: 明鏡止水
姜芽編
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8-5 月の都

「倒した…のか?」


「とりあえず撃退はできたはずだ。今のうちにウイルスを見つけよう」

輝夜を倒した所で、ウイルスが残っていれば意味がない。

今回使われたウイルスの元は、ノワールで産み出された負の遺産。これ以上迷惑をかける訳にはいかない。


「ところで、さっき俺達は…」


「死んだよ、間違いなく。途中から負けるかもと思い始めてな、念のためにさっきの戦いの途中、隙を見て『不死鳥降臨』を使っておいたんだ」


「ああ、そういうことか」

不死鳥降臨とは姜芽が扱う奥義の一つで、その名の通り不死鳥の力を身に宿らせる術。見た目や行動には変化はないが、外傷によって命を失っても全快して復活できる。さらに、火属性の攻撃の威力が倍増する効果もある。


扉を潜ると、そこには今までで一番大きな絵が掛けられていた。

ただしそれには、今度は満月だけが描かれていた…

「龍神、ちょっと待て」


「どうした?」

姜芽は龍神を呼び止め、また先ほどと同じ術をかけた。

「え、またかよ…?」


「保険としてな。とはいえ、これは一回しか効かない。やられる前にやるつもりでいこう」


「…だな。よし!」

そして、二人は絵に飛び込んだ。







小さな建物の中に出た。

扉をくぐって出た先は、日本の平安を思わせる古風な建物が並ぶ集落だった。

「ここは…?」


「『月の都』だな…ここのどこかに、全てがあるはずだ」








小一時間後。

二人は、都の中で最も大きな建物の前に来ていた。

最初来た時から遠目に見えてはいたのだが、念のため全域を探索してからこようという事にしていたのだ。

「普通にここっぽいな」


「だな。けど入る前に」

二人の後ろには、全身真っ赤の人型の化け物が大量にうろついている。

「こいつらを掃除しないと」


…実はこの都には住人が1人もおらず、代わりにこの化け物がいた。

最初は各個撃破していたが、数が多くキリがなかった。

しかし、奴らには視覚はあるようで、二人を的確に追ってくる…眼球は見当たらないが。

それを利用して一ヶ所に集め、まとめて倒そうという事にしたのだ。


まずは龍神が先陣を切る。

刀を強化し、一度敵を大きく薙ぎ払う。

そして、強烈な電撃を浴びせる。


姜芽も負けてはいない。

鳥の形をした火を呼び出し、前列の敵を焼き払う。

続けて斧を構えて高速回転し、敵を片っ端から切り刻む。

さらに飛び上がり、多数の小さな火を落とし、地上で複数の小規模な爆発を引き起こす。



そして、残る敵は一体のみとなった。

龍神が決めるかと思われたが、

「[ラスト·メルトダウン]」

相手の体を中心から溶かす技で、姜芽が決めた。






「焼き払えたな」

敵の殲滅を確認した。

それとともに、屋敷の門が開くー。



屋敷の内部はというと、まるで廃墟のようだった。

いや、廃墟、とはいかないまでも、障子があちこち破れている、家具や床はうっすらと埃を被っているなど、しばらくは誰にも使われていない事が窺える状態だった。

「ここは使ってなかったのか?」


「あいつは間違いなくここに住んでたはずだ。使ってなかった、ってのはどういう事だ…?」


そんな会話をしながら進んでゆく。



地平の下より燃ゆる鳥が現れる。

燃ゆる鳥を墜とし、月へと辿り着く。


やがて月は満ち、天の頂きへ昇る。



ー道中、龍神は以前に聞いた予言を思い出していた。





しばらく進み、珍しく破れていない障子戸を開けると、そこには庭園があった。

枯山水の中に、竹林のようなものがある。

恐る恐る庭園に足を踏み出し、竹林に近づくと、

「来たわね…」


輝夜の声だった。

「…どこだ!?どこにいる!」


「私はお前たちの目の前にいる…ここで、ずっと待っていた」


「俺たちをか?」


「いいえ…私は薬と完全に適合するべく、ここでこの時を待っていた。そして、それは既に達成された。来なさい、私の前へ…」

声はどこからともなく聞こえてくる。

しかし、奴がどこにいるのかはなんとなくわかる。


一本だけ、異様なほど太い竹。

おそらく、あの中だろう。




二人は竹の前まできた。

「私は一つ見誤っていたみたいね。お前たちは、全体的な性能としては間違いなく優秀だけど、致命的に足りないものがある。だから、私と同等の立場になる資格はない。そして、生きる資格もまた…」


「わけわからん事言ってないで出てこい。せっかく来てやったんだ」


「まあ、待ちなさい。お前たちは、薬がどこにあるのか知りたいのでしょう?」


「なんで知ってる?」


「それくらいお見通しよ。冥土の土産に教えてあげる…

薬は、今ある分は全てお前たちの目の前にある」


「なんだと…?」

おそらくこの竹の形をした物体の中…いや、正確にはこの中にいるモノの中に全てのウイルスが入っているのだろう。

「じゃ、お前を始末すればどうなる?」


「もちろん、薬はなくなる」


「へえ…話はこの辺にして、そろそろお顔を見せてくれよ」


「ええ、すぐに見せてあげる。私の、究極の姿をね…」

そして大地が激しく上下に揺れ始める。

とても立っていられず、近くの竹や岩を掴んで持ちこたえる。


「身の程知らずの余所者たちよ。

この世の『新たな統治者』に楯突いた罪…その滅びをもって償うがいい!!!」

叫びとも怒号ともとれる声が響く。

そして竹が割れ、中から大量の紫の液体が流れ出す。





ーかつて龍神が聞いた予言。


やがて月は満ち、天の頂きへ昇る。

竹の爆ぜる時、異形の花が現れる。

それは新たな統治者を名乗り、この世の全てを討ち滅ぼす。

大地も我らも、己に挑みし者すらも。




やはりあいつの言葉は正しかった。

意味がようやくわかった。



液体で濡れた地面。倒れた大量の竹。

地面から生えた無数の触手。

そして…



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