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東方訪問記  作者: 明鏡止水
姜芽編
32/64

7-4 地獄の山

数百年前に現れた「鬼」と呼ばれる化け物。

その中でも、特に強力な4体のうちの1体。

無類の酒好きであり、すでに数百年の間酔っているとも言われる。

腕力や戦闘力はあまり強くないが、鬼としては理性的で知能が高い。

「姫」によってウイルスを投与されたと考えられ、現在は行方不明だが…?




鬼の中でも特に強力な4体のうちの1体。

気性が荒く乱暴者だが、悪い人物ではないらしい。

また力がやたらと強く、喧嘩好きであるものの、酒を飲ませると不思議と大人しくなるという。

ウイルスの実験体に選ばれて以降、その姿を見た者はいない。



二人は一度谷を下り、二つ目の山の麓についた。

「山は一つじゃなかったのか?てか、さっきの蛇と鷹は結局何だったんだ?」


「わかんねーよ。こっちも事前情報と違う所がありすぎて混乱してるんだよ…」


「いや、事前情報ってなんだよ…」


「とりあえず、こっちが本命で間違いなさそうだ。鬼がいるって話だったが、恐らく奴らも感染してるだろう。見つけたら、片っ端から始末していこう」

さらっと出てきた単語を、姜芽はしっかり拾う。

「鬼って、昔話なんかに出てくるあの鬼か?」


「そう…と言えなくはないが、姜芽が思ってるフォルムの鬼とは違うな。奴らの外見は角がある以外、普通の人間と然程変わらない。けど力が馬鹿みたいに強くて、定期的に地上に来ては人間を食い漁っていくそうだ。

ただ、まあ…基本的に呑めればいい、って思考回路をしてるから、例え人間だろうが一緒に宴をしてくれる奴なら誰だって歓迎するって聞くぜ」


「酒飲みの化け物、ってわけか。酒呑童子みたいだな」


「確かにな。ま、そーいう訳だから、俺達がやることはいつもと同じだ。勝てない相手じゃあるまいよ」


「…そうか」



道中、 龍神は小声でぶつぶつと喋っていた。

「あれ、何で山に鬼がいるんだ?あいつらは確か地底に…まあ色々変わってるみたいだし、深く考えず行こう」




山の中はほぼ原生林そのものだった。

背の高い草が生え散らかしていて、道と呼べる道はなかった。

飛ぼうにも、過密なほど生い茂った木々に邪魔されてできない。

そこで草をかき分け、道なき道を進んでいく。

斜面が急な所や高い所は、上に生えている丈の長い草をロープ代わりにして登った。


「この道…どこまで続くんだよ」


「山頂まで…ではないと思いたいがな」

そんな会話をしながら進むこと数十分、やっとまともな道に出た。


そこには、集落の跡のような建造物群があった。

誰かいる気配はなかったが、座布団のように敷かれた(わら)がバラバラになっていたり、壁に穴が開いていたり、(すだれ)がズタズタになっていたりと、かつて誰かが生活していたが、その後に何かが暴れまわって放棄された…という事がわかる痕跡があった。

「ここで、一体何があったんだ」

龍神が家の中を調査しているうちに、姜芽は外を探索する。


道なりに少し進むと、広場らしき場所に出た。

ここも塀が壊れていたり、地面に血痕があったりと荒れていた。

(これも鬼…って奴がやったのか。でも、誰もいないのはどういう事だ?)

そんな事を思っていると、視界の隅に一つの女らしき人影が映った。

それは、気力のない目付きでふらふらと歩いている。

(あれが鬼、か?)

そいつは姜芽に気づくと、ゆっくり近づいてきた。

そして接触する直前、



斬撃が飛んできた。

それと共に、女は額から血を流して倒れた。

「姜芽!」

もちろん、斬撃を放ったのは龍神だ。


「こいつが、鬼か?」


「ああ。…見ろ、立派なモノをお持ちだろ?」

そんな事を話していると、奥から大量に現れた。

「…!」

すぐに姜芽も斧を抜き、遠距離攻撃技を連発した。

向こうは走ってはこないが耐久が高く、頭をかち割っても倒れない。さっきのがたまたま一発で倒せただけだったようだ。

そこで、術や魔弾を使って倒していく戦法に切り替えた所、容易に倒していく事ができた。


しばらく倒しているうちに、鬼は現れなくなった。



少し進むと、再び鬼とおぼしき女が現れた。

ただし、単独で。


姜芽は技の構えを取ったが、止められた。

「あいつは俺がやる」

龍神は女に近づき、話しかけた。

「よう。お前は勇儀だな?」

向こうは向こうで喋らないものの、驚いたような反応をしていた。


「ここで何してる?…あーいや、俺達は大した者じゃない。ただ、ちょいと通して欲しいだけだ。何かお望みがあるのか?」

女は無言で龍神の話を聞いている。


「いや、やっぱり言わなくていい。お前さんの事だ、勝負…したいんだよな?」

女はすこし表情を緩めた。

「なら折角だし、弾幕でいこうじゃないか。先攻でいいかい?」

龍神が悪意を含ませた笑顔を浮かべると、女はわずかに笑みを浮かべたまま、頷いた。

「そうか。やっぱり自信があるんだな…」

そして龍神は電気の球を複数浮かべ、飛ばした。

女は勿論その球をよけた…直後、感電したのか痙攣して動かなくなった。

ここで龍神はすかさず刀を抜き、

「殺人技・[不手(てつかず)ロボトミー]」

女の顔の前で空振りした。

すると、女は完全に動きを止めた。


ここで、姜芽が口を開いた。

「何をしたんだ?」


「脳の一部を切り離した。これでこいつはもう…」

と、ここで女に異変が起きた。

頭が破裂し、中から醜悪な見た目の肉の塊が出てきて頭全体を覆った。

と同時に、その肉の塊の隙間から触手のようなものも生えて、それがウネウネと(うごめ)く。

そのまま龍神の方に向かってきたので、彼は近づかれる前に一際強力な魔弾で頭をぶち抜いた。

化け物はほぼ即死したが、龍神は念の為体を数回切り刻んだ。



そのころ、姜芽は後方に現れた別の鬼の相手をしていたのだが…

龍神が振り向くと、姜芽はいなかった。

かわりに、また新しいタイプの鬼がいた。

(ありゃ萃香か。にしても、なんでこんな事になってんだ?地獄の連中がいっぱい、これじゃ創世の山でも妖怪の山でもなく、地獄の山だな)


そんな事を思っていると、鬼は突然甲高い咆哮を上げた。

瞬時に耳を塞いだが、それでも脳裏に響くほどの声量だった。まともに聞けば鼓膜が破れていたかもしれない。

さらに、今の咆哮を聞いてか、他の鬼たちがぞろぞろと集まってきた。しかも、今度は普通に走ってくる。


「《《飲んだくれ》》の料理は後回しにするか!」

電の中級魔法である「プラズマ」の魔導書を取り出し、迎え撃つ。

今度は走ってくるだけでなく耐久力が上がっており、さっきのように簡単には倒せない。しかも、頭を撃つと先ほどの勇儀と同様の変異を遂げるものがいるため、胴体を狙わなければならない。

当然ダメージは低く、倒しづらい…が、龍神はアンデッド討伐のプロだ。このような時の対策はよく心得ている。


術を唱え、一度に複数体を攻撃する…ただし足に。

そうすると、倒すことは出来なくとも動きを鈍らせる事が出来る。

そうして動きを封じた所に斬撃を飛ばすことで、まとめて片付けることが出来る。

しかも向こうは動きが遅いので、楽にこの戦法を使える。




しばらくして、龍神は魔導書を納めて刀に持ち替え、鬼達向けて突っ走り、切り込んだ。

近接は当然危険が伴うが、これなら簡単かつ確実に倒せるし、彼はこのやり方のほうが好きなのだ。

それに、龍神には[電操]の異能がある。

万一の時は、相手を感電させて動きを止める事も可能だ…まあ、そんなことをするまでもないだろう、とは思っていたが。



残りの鬼を全て斬り捨て、萃香を見る。

すると奴はこちらを睨んだまま、大きく口を開けた。

その口に向かって、猛烈な風が吹き込んでいく。

吸い込まれないように刀を地面に刺し、しがみつく。


ふと思った。

「まさか、姜芽はこいつに吸い込まれたんじゃ…?」


とすれば、体を狙っては攻撃できない。

首をはねるか、頭を貫くか…どちらにせよ、首から上を攻撃して仕留めなければならない。しかし、電術は姜芽も感電させてしまうリスクがある。

「この吸引が止まってくれればいいんだが…」



と、突然萃香の体が爆発した。



視界が晴れると、そこには姜芽の姿が。

「…姜芽!」


「イリュージョン成功!…ってな」

姜芽の全身は、得体の知れない液体で紫色に染まっていた。

「いやー、ちょっと焦ったぜ。

龍神が見てない間にこいつが出てきたんだけど、いきなり吸い込まれたんだ。でも、こいつの腹ん中は変な液体で満たされてた。だから「(かすみ)爆炎」を使った」


霞爆炎とは、液体を細かい粒状にして舞い上がらせ、粉塵爆発のようにして爆発を起こす火の術。

何らかの液体が近くになければ使えないが、高い威力を持つ。

「なるほど、考えたな」


「しかし…おっそろしい化け物がいたもんだ。こんなやつを地上に放ったらえらいことになるな」


「ああ…」


龍神は顎に手を当ててしばし考え、口を開いた。

「もしかしたら、この山自体が一つの実験場なのかもしれないな」


「え?」


「あいつにウイルスの知識があるわけはない。…やっぱり、凛央が何か関係してるのは間違いない」


「凛央が…か。としたら、その証拠を掴まないとな」


「ああ。まず、進もう」





さらに山を登る。

時折現れる鬼は、頭や胸を攻撃するとやはり変異した。

しかししばらく倒しているうちに、体を攻撃すると迅速かつ変異させずに倒す事ができると気づいた。

次第に、新たな変異体…と言うべきか、異常な程長くなった角や爪を用いて攻撃してくるものが現れた。このようなものは、近づかずに術で倒した。


さらに進むと、上半身、特に胸から腕にかけて鎧を纏ったような外見の鬼が立ちはだかるように現れた。

それらは、こちらを見るなり獣のような咆哮を上げて突っ込んでくる。

物は試しと取っ組み合いをしてみてわかった。動きは鈍いが、その分攻撃力と防御力が高い。

立派な上半身は、恐らくは肋骨などの骨が大きく変異したもののようだ。

こいつに関しては、姜芽が対処法を閃いた。

龍神が取っ組み合いをしている間に観察してみた結果、首の根元の部分の守りが手薄なように感じた。そこで、飛びかかって剣を突き刺すとやはり致命傷を負わせられた。


龍神が鬼を麻痺させ、姜芽が斧を剣に変形させて弱点に突き刺す。

こうすることで、容易に撃破できた。




『鬼』

数百年前に現れた、立派な角を持つ事と酒好きである事が特徴の化け物。

妖怪と同様に人間を食らうが、妖怪とは異なる存在。

基本的に知能が低く、酒と宴さえ好きであれば誰とでも仲良くする傾向にあるため、人間と一緒に宴をしている場面も度々目撃されている。

本来は地底や一部の山岳地域で確認されていたが、凛央によるバイオテロが起きる少し前からその目撃情報が途絶えている。

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