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東方訪問記  作者: 明鏡止水
姜芽編
29/64

7-1 幻想回帰

1ヶ月後 



龍神は、今回の騒ぎを国に報告するため紙にまとめていたのだが、ウイルスの実物及びそのデータがない事に気づいた。


まあ、別にないならなくてもいい。

凛央は前例がある上に、上層部の各組織にも目をつけられていた。

なので、彼女が事件を起こしたという話自体は誰も疑いはしないだろう。

しかしそれがこことは別の世界で起きた、となると信じられるかは微妙だ。


しかも、報告をまとめた所で、決定的な物証が何もない以上、完璧に信じてもらえるかは怪しい。

だからと言って報告しないというわけにもいかない。


龍神は考えあぐねた末、姜芽を呼んで地下室へ向かった。

地下には「ベイトーア」がある。

凛央が使っていた船であり、向こうへの行き帰りに使用した船だ。


「この船、ここにしまってあったんだな…」

関心する姜芽を尻目に、龍神はさっさと乗り込んだ。

「行くぞ!乗れ!」



「いやいや、レポートまとめてたんじゃなかったのか?」


「それに足りないのがあるから、向こうに探しにいくんだよ!」


「え?いや、ちょっと待てよ!」


「とにかく早く乗れ!」





結局、姜芽は半ば強引に乗せられた。

前回も、こんな感じだったような気がした。

「で、必要なものって?」


「物証がないんだ。向こうには、まだウイルスの実物くらいあるだろ。それを取りに行く」


「いや、もう1ヶ月経ってるんだぞ?あるかな?」


「ある!…いや、見つけてやる!なくなっててたまるか!」


「運任せじゃんか…てか、行き方わかんのか?」


「前のフライトの履歴があるから大丈夫だ。

それじゃ、掴まれよ!」

そしてー






2人は無事、二度目の"幻想入り"を果たした。

「いやっほい!まさか、またここに来れるなんてな!

何回も幻想入りする奴はそうそういないからな、誇れるぞ!」


「誇れるとかどうでもいい。てかここは…里、か?」


「設定が間違ってなきゃ、そのはずだ。さっそく探し物といこう」

そうして行動を始めようとしたその時、

「あら、あなたたち、久しぶりね!」

聞き覚えのある声がした。


「あ、お前は確か…」


「人形使いじゃないか。何してるんだ?」


「ちょっと買い物をね」


「久しぶりって、たかだか1ヶ月ぶりだろ?」


「え?私はあなた達に会うの、3ヶ月ぶりなんだけど」


「え?」


「時間の流れが違うパターンか。で、お前さんは何だ、霊夢の人形作って抱き枕にでもしてるのかい?」

龍神は意地の悪い笑みを浮かべて言った。

「ちょっと!声が大きいわよ!…なんでそんなこと知ってるの?」

アリスは恥ずかしそうにしながら、囁くように言った。


「有名だからな」


「有名って…とにかく、誰かに言いふらしたりしないでよ?もし言ったら…」


「あー、わかったわかった!」

ここで姜芽が乱入し、話を進める。

「なあアリス、俺たちは探し物をしに来たんだ」


「探し物って?」


「お前さんには関係ない。せめて…魔女かお医者様なら良かったんだがな」


「私も魔女なんだけど」


「魔女は魔女でも病弱のほうな!とにかく、あんたに用はない!」

そうして龍神が背を向けると、アリスは彼を呼び止めた。

「あ、そうだ!」


「まだ何かあるのか?」


「お医者様って言ってたけど、あいつは最近顔を見せてないわよ」


「えっ…本当か?」


「何故だかわかんないけど、最近はずっと閉まってるのよ。おかげで私達は大変なんだから…」


「閉まってる…ってことは、いつものとこにいるんだな?」


「だと思うけど」


「わかった、行こう」


「ちょっと!待ちなさいよ!」

アリスの言葉を無視して、二人は走っていった。






例の建物は町の外れにあった。

「ここだここだ…」


「あいつ、どうしたんだろう?」


「取り敢えず、訪ねてみようか」

龍神がドアに手を開けたが、開かない。

「いないのか?」


「…いる」


「うお!!ビビった!」


「裏から入ってきてくれる?」


言われるがまま、裏から入った。


「二人とも、久しぶりね」


「なんでこんな面倒臭いことを…」


「それは…まあまず上がってよ。説明するから」






「さてと。アリスから聞いたが、なんで店を閉めてんだ?」


「最近、どうもやる気が起きなくてね」


「それだけか?」


「言ってしまえばそうなんだけど…」


「まだ何かあるのか?」


「…聞いてくれる?」


「勿論だ」


「ありがとう。聞いてくれると思ってたわ」


「え?」


「あなた達が帰った後、私はあなたに言われた言葉の意味がわかった」


「おれ…あ、龍神が言ってた言葉?なんかあったっけ?」


「あなた、私に関係者がいる、って言ったわね」


「お!てことは…」


「ええ。私は孤独なんかじゃない。私には、従うべき人物がいた。

どr…いえ、助手と呼べる者たちもいた。

あなたの言ってた通り、私はみんなの事を忘れていた。

私が全てを思い出したのは、あなた達二人のお蔭。

ありがとう」


「思い出せたんなら、よかったじゃんか」


「やはりそうだったか。あんたに孤独は似合わないからな」


「そうかしら?」


「あんたの周りには、不死者と(ペット)の群れがいなきゃ、違和感があるんでな」


2人の会話に、姜芽はどこか闇を感じた。


「それはさておき、あなた達が来てくれてよかった」


「なんでだ?」


「丁度、頼みたい事があったの」


「頼みたい事…?」


「ええ。あなた…龍神、だったわね。霧の湖ってわかる?」


「人魚どもの湖…だったか。あれがどうした?」


「あそこに行ったことある?」


「無いな」


「実はあそこは今、死の湖って名前に変わってるのよ」


「なんでまた、そんな物騒な名前に?」


「前の異変の後、あそこの水が真っ赤になったとか、あそこの近くを通ると、湖に引きずりこまれるっていう噂が流れたとか…色々あって、そう呼ばれてるのよ」


「ほほう」


「あそこは今でも水が赤いままなの。その原因を突き止めるため、私は以前にあそこの水を調査した。そして、例のウイルスを見つけた」


「それはつまり…」


「あの湖は、まだ汚染されている。近くを通った者が消えるっていうのは、恐らく…」


「…。それで、どうすればいいんだ?」


「幸い、私はあのウイルスを研究して、特効薬となる薬を完成させた。それを撒けば、あの湖も元に戻せると思う」


「そうか…で、結局俺らは何をすればいいんだ?」


「まず、これを飲んで」

2人の前に、木のコップに注がれた透明な液体が差し出された

「それは?」


「例のウイルスの…要は予防薬ね。それを飲んでおけば、汚染された水に入っても大丈夫なはず」


「ほう…」


「それで、お願いって言うのはね…あの湖にある"何か"を取り除いてきてほしいの」

あまりに漠然とした発言に困惑を隠せない。

「どういうことだ?」


「詳しくは私にもわからないけど、あの湖には何か、ウイルスを発生させているものがあるみたいなの。それがある限り、あそこを浄化する事はできない。

だから、それを排除してきてほしい」


「でも、なんで俺達に?」


「あそこにあるものの正体がわからない以上、不用意にこの世界の者を向かわせる訳にはいかない。

でもあなた達は、前の黒幕と同じ世界から来たみたいだし、なんとかなるかと思って…」


「そういうことか。わかった、行こう」


「ありがとう。私は私で、浄化の準備を進めておくから」


「わかった。あ、そうだ」


「まだあるの?」


「まあ大丈夫だとは思うが、俺たちは絶対に感染しないんだよな?」


「大丈夫よ、さっき薬を飲ませたでしょ」


「わかったわかった。じゃ…」


「その、湖ってのはどこにあるんだ?」


「んーと、あの湖は…北?いや、西か…西だな!」







少し時間がかかったが、湖に到着した。

「うわ、予想以上に真っ赤だな…」

湖は、姜芽が考えていたよりも赤かった。

それこそ、血の海のように。


湖のほとりを見渡したが、怪しい物は特にない。

「見た感じ、それらしい物は見当たらないな…」


「…。なあ、魔力探知じゃダメかな?」


「あ、その手があったな。試してみるか」 

魔力探知とは、文字通り魔力を持つものを探知できる魔法。

探しているものもノワールのものであるなら、この魔法に引っかかるはずだ。

姜芽は手を上げ、探知結界を張った。


「どうだ?」


「んー…あっ、何か湖の底にあるな」


「うえ、マジかよ…まあ仕方ない。いつも通りアレで行こう」


「だな」

2人は魔法を詠唱する。

「[アーメリア・マリム]」

これは、水中での活動に特化した魔法鎧を着込む魔法。

見た目には何の変化もないが、これで水中でも活動が出来る。


龍神は合わせて「スウェム」の魔法も使う。

これは泳ぐ速度を上昇させ、水中で動きやすくする魔法だ。

姜芽は別に使わなくてもいいが、龍神は泳げないため、水中をゆく際はこの魔法がほぼ必須なのだ。

「それじゃ、潜るか…」

先に、姜芽から潜った。

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