表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
東方訪問記  作者: 明鏡止水
姜芽編
10/64

3-2 一騒ぎ

占星術を得意とする人間の占い師。

実際には、現実から魂を飛ばし、魔力で形成した肉体を持って活動している。

外との境界を任意で自由に越えられる数少ない存在。




執念深く強欲な、今は亡き国の帝の娘。

元は人間だったが、誤った選択をした。

永い時が経った今、死ぬ事も仲間を作る事も許されず、終わりなき孤独を味わい続けている。


南へ向かうと、すぐにその占い師を見つけられた。

道端で店を構える易者。

あれが、そうなのだろう。


「お、いたいた」

近づくと、それは二人にすぐ気づいた。


「お待ちしておりました」


「えっ?」


「私は、この世界で占い師をやっている蓮子と申します。

あなた達が来るのを、待っていました」


「待ってた…って?」


「あなた達は、いずれこの異変を解決する存在。

しかし、それが実現するかはまだ明らかではありません」


「えーっと、つまり…?」


「私の役目は、あなた達が異変を解決する、という結末に到るための助言と案内をすること。いずれあなた達がここに来ることも、知っていました」


よくわからないが、とりあえずこいつは預言者的な存在なのか。


「じゃ、俺達がこれからどうすればいいかわかるのか?」


「ええ、既に占っています。

町の北通りへ向かって下さい。そこで、次のステップへの扉を開けるでしょう」


「北、だな?」


「はい。あなた達なら、あの怪物達とも渡り合えるでしょう」


「言ってくれるな。…よし、行こう」





北の通りへ来た。

特にこれと言った事はない…


と思いきや、突然甲高い悲鳴が響いた。


「何だ!?」


悲鳴の方を見ると、一人の男が女に噛みついていた。

さらに、他の所でも同様の事が起きていた。


「始まったか…」


姜芽は武器は抜かず、手に火球を産み出した。

そして、人を襲う化け物めがけて飛ばした。


化け物は吹っ飛び、炎に巻かれて動かなくなった。


同様に龍神も、手を突き出す。

一筋の電撃が放たれ、人間を追う化け物に刺さる。

化け物は痺れ、倒れた。


「生き残ってるヤツは逃げろ!化け物は俺達がやる!」

姜芽が声を張り上げた。


それに反応したのか、化け物達はみな人間を貪るのをやめ、姜芽達の方を見た。

その姿は、まさしく異形の怪物の群れだ。


「さて、やるか」

ここで、二人は武器を抜く。


最初に向かってきた化け物に、

「斧技 [スーパーターン]」

姜芽は強力な薙ぎ払いを決める。


続けて襲ってきたものは、斧を振り上げて斬り裂いた。

「斧技 [チェストベルト]」


さらに、遠くにいる化け物にも斧を投げる。

「斧技 [スロウホーク]」

回転する斧で、化け物を真っ二つにした。


龍神も負けてはいない。

「刀技 [レッドスライサー]」

刀を振るい、化け物の首と腰を斬り裂いて倒す。


さらに、

「刀技 [水月斬り]」

向かってきた化け物を正面から斬り殺し、

「刀技 [波動返し]」

振り向きつつ、後ろにいた化け物を倒した。


残る化け物は2体となった。

これらは…



もう、言うまでもない。


「斧技 [レイドスレイヤー]」


「刀技 [一文字斬り]」

二人が、それぞれ1体ずつ倒した。



「さて、終わったかな」

姜芽は斧を納めたが、龍神はまだ、何かが潜んでいる気がした。


「いや…たぶん、まだいる。今の化け物どものボスが…」


彼が言い終わる前に、それは現れた。


「!」

どこからともなく火の玉が飛んできた。

龍神はそれをしゃがんで回避し、声を上げた。


「誰だ!」


声に応えるように現れたのは、やたら長い白髪に赤いリボンをつけた、背の高い女。

二人を睨みつけるように見てきたそれを見て、龍神はつぶやくように言った。


「妹紅…?なんでお前がここに?」


「お前らこそ何者だ。

なんでこの世界にいる?そして、なんで私の名前を知ってる?」


「俺はお前の事は知らない。そして、この世界に来たのも偶然だ」

姜芽はそう釈明したが、まああまり意味は無いだろう。


「お前はそうかもしれない。だが、そっちの男が私の事を知ってるのは事実だ。私の事を知ってる奴、しかもよそ者、ってなると、放ってはおけない。

生憎だが、お前らにはここで消えてもらうよ」


そう言って、女は手に火を灯した。

「へえ、火属性か…」

姜芽はつぶやきながら、火球を交わした。


すると、女は技らしきものを詠唱した。

「炎符 [ヘルズフレア]」


紫色の炎が現れ、瞬時に広がった。

龍神は結界を張って防いだが、姜芽はそんな事はしなかった。


その様子を見て、女は察したようだった。

「…そうか、お前も火か」


「正解だ。…まあ、まずまずってとこか。

けどな、この程度じゃ俺は傷つきやしないぜ」

そして、姜芽も術を唱えた。


「炎法  [溶岩大洋(マグマオーシャン)]」

煮えたぎる津波のような溶岩が女に襲いかかった。


「ふーん…溶岩か」

女は、今度は炎の鳥を召喚してきた。

その鳥が羽ばたくと、強烈な熱風が吹いた。


「熱波か。それなら俺だって使えるよ。

炎法 [ヒートスウォーム]」


無数の小さな高温の波を召喚し、飛ばす。


女は若干ダメージを受けたようだったが、それでもさして表情を変えたりはしなかった。


「全然じゃんか?これなら、私の技の方がまだ…」

そこまで言いかけたが、女は最後まで言い切れなかった。


龍神が、強烈な電撃を浴びせたのだ。


「ぐっ…」


女が電撃を受けてもなお生きていたことに、姜芽は少しばかり驚いた。


「龍神の電撃を受けても生きてられるとは…お前、人間じゃないな。妖怪の仲間か?」


「違うね…私は、妖怪じゃない。私は…」


「元人間の化け物、だよな」

龍神の言葉を聞いて、女は顔を上げた。


「お前は、元々は人間だった。だが、ある選択をして人ならざるものになった…。俺達に、ちょっと似てるよ」


「…私が、お前らに似てるだと?」


「ああそうだ…俺達は元々人間だったが、ある時選択をして、自ら人ではない存在になった。

俺達はお前とは違う存在だが、似てるのは確かだ。

…ま、言っても無意味か」


そして、龍神は刀を納めた。

「なんで俺達を襲う。そもそも、お前はここにいるべき奴じゃないだろう」


すると、女は意外にも素直に話し出した。

「私はな…お前らと同じ、外来人と契約してるんだよ」


「契約…?」


「そうだ…あいつは、素晴らしい考えを持っている。

私は全面的にあいつの考えに同意した…だから、こうしてあいつとの契約を果たしているんだ」


「どういうことだ」


「あいつは、計画の妨げとなるものは全て排除しろと私に言った。だから、それを果たす。

そして…」


「そのために人間たちを化け物に変えた、ってか」


「…。

いいこと教えてやるよ。あの化け物共は、あいつが作り出したモノの副産物に過ぎない。

あいつが本当にやりたがってるのは、もっともっと強くて、凶悪な怪物の軍隊を作ることだ。もう、ある程度はできてるはずだ。そしてそれは、やがてこの世界を埋め尽くす。そして、やがては外の世界も…」

ここで、龍神は女の顔を踏みつけた。


「私を殺したければ、殺せ。たとえ私が死のうと、私達は不死だ。お前らごときに、私達を殺せるものか。

く、く、く…」


そして、龍神は女の顔を踏み潰した。


おびただしい血を浴び、龍神は一言言った。


「…殺してみせるさ。お前も、あいつも」







「ありゃま。あんたのニセモノさん、死んじゃったみたいだねえ」

死者を操る力を持つ化け猫…火燐は、そう言った。


「いやいや、ニセモノなんかじゃあない。

あいつは、私の欠片の一人。私達はみんなで一人だ」


「そうかい。てことは何だ、あんたもニセモノなのかい?」


「さあてな。私も忘れちまったよ」


「…はあ。ま、とりあえずあたしらは撤退しなきゃね。

この事を、あの方に伝えないと」


「ああ、そうだな。

…あいつら、なかなかやるな。次に会う時は、欠片を全員連れて来てやる。

本物の私と、私の欠片が、奴らを殺す。

その時まで、せいぜい生かしといてやろう」


火を操る元人間…妹紅は、そう言って笑った。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ