もう いない…
寮の自室でルイスは部屋の整理をしていた。
突然梨咲から送られてきた手紙。
ルイスの机に文字を刻んでいく。
『ディラン先輩に1人で来いと呼び出された。私を捜して。』
ルイスはドキッとした。
心臓が高鳴る。
居ても立っても居られなくなり、すぐに部屋を後にした。
寮を飛び出し、梨咲の気配を探る。
そう遠くない場所だと把握し、急いでその場所へ向かった。ところが、気配は感知するのに梨咲の姿は見えない。
「幻影魔法か…!」
ルイスは小さく唸って、護身用の自身の短剣を抜いた。
もしもの時の為に梨咲から教わっていた、古の魔法。
幻影魔法を外から他者が破る方法。
短剣に古の魔法を施し、ルイスは空間を切り裂いた。
すると、何もない筈の空間に、突如亀裂が現れた。
ルイスは尚も短剣で亀裂を破り進み、自身の手で壊していく。
そうして一気に崩れ落ちた破片の中からディランとディランに抱えられた梨咲を発見する。
ディランは驚いた顔をして振り返ったが、相手がルイスだと確認すると不敵に笑った。
「くくっ。1足遅かったな…!」
ルイスはつかつかとディランに歩み寄り、抱えられている梨咲を確認する。
寝ている?
ルイスは震える手で梨咲に触れる。
「梨咲からお前の記憶を抜いて預かっている。梨咲はどちらを選ぶのかな?」
ディランがくくっと笑う。
「…どういう事かご説明頂けますか?」
ルイスは梨咲の体に浮遊術をかけ、ディランから引き離す。ディランから少し離れた所に梨咲を降ろすと、ルイスは眠る梨咲をぎゅっと抱きしめた。
ディランはその様を冷めた目で見ていた。
「梨咲と賭けをした。梨咲が俺とお前の戦いを認めなかったからな。梨咲からお前の記憶だけを抜いた。梨咲が再びルイスを婚約者と認めたら、今後一切手出しをせずに、記憶を返してやる、と。」
ルイスは梨咲の顔を見つめながら静かにディランの説明を聞いていた。
「梨咲さん…」
ルイスが肩を震わせる。
「梨咲さんの中に、今俺は居ないんですね…」
梨咲に話かけるが梨咲はすやすやと寝ている。
「もぉ、仕様がない人だなぁ♡」
ルイスはポッと頬を赤らめた。
「もう1回惚れさせろって言うんですか?参るな〜!そんなに俺を求めてくれるんですね♡///」
ルイスの予想と反する反応にディランは面白くない、と落胆した。 もっと悲観すると思ったのに…!
「梨咲は1ヶ月以内でとか言っていたぞ?大した自信だな!」
ディランが付け加える。
「1ヶ月?!酷いな梨咲さん…。出会って2週間後には気になってた癖に!!」
ルイスはディランの話を聞くと怒り出した。
「あったま来た!もう、最短で襲ってやるんだから!」
「はぁ?!」
ルイスの怒りが理解出来ずにディランは間抜けな声を出した。
「全く、俺のお姫様は愛を欲しがりますね…。」
寝ている梨咲にキスをする。
「速攻で堕としてあげますよ♡覚悟して下さいね♡」
ルイスは梨咲に言い聞かせる。
「お前が婚約者という立場であることも消している。その指輪はお前が取れと言っていたぞ?」
ディランは忌々しそうに口にする。
先程ディランが梨咲の指から指輪を抜こうとしたら、弾かれて触れなかった。
梨咲のヤツ、いつの間にか微弱の防御魔法をかけていたな?! 小癪な…!
チッと舌打ちする。
ルイスが梨咲の指から婚約指輪を抜く。
と、同時に梨咲の気持ちがそっと優しくルイスに降ってきた。
『大好き…』
ルイスは愛しい気持ちで梨咲を見つめる。
ルイスは今度こそ泣きそうになって梨咲を抱きしめた。




