隣に居たい…
凛は1人、梨咲とルイスの結婚式が行われる教会を外から眺めていた。
いよいよ 結婚されるのですね… 梨咲様…
幸せになって下さい…
教会を背に少し歩き、河川敷に腰を降ろして川を眺める。
先日、梨愛様が現れた。
『 凛… 幸せになって欲しいの… 』
自分の幸せ…?
梨愛様の居ないこの世の中で、幸せを見つけることは困難な事だ。
私の幸せは 梨愛様の笑顔を見る事 だった。
それ以外は 何もいらなかった。
梨愛様の心が欲しい等、思った事もなかった。
でも…
『凛が 好きなの… 』
梨愛様が泣きながら想いを伝えてきたあの日…
梨愛様の想いを無視出来なかった。
1度でも応えてしまった事が、梨愛様の自害を引き起こした。
自分の気持ちを優先してしまった事がみんなを不幸にした。
自分の気持ちはロクなモノでは無い…
「こんな所にいらしたのですか…!」
声のする方に振り返ると、マリーが立っていた。
「! マリー様…!どうしてここに!」
結婚式はもう始まっている筈では?凛は慌てた。
「凛の姿が見えなかったので、捜しに来ました。」
「そんな…!お兄様の結婚式は始まっているでしょう?」
「ええ。でも… 凛の傍に居たかったので…」
マリーは凛の隣に腰を降ろした。
凛は困った。
マリー様は実に可愛らしい方だ。清純無垢で天使の様。そんな方が、自分に心を向けている事がそもそも間違っている。
私は…愛して貰える様な人間ではない。
こんな天使の様なマリー様まで… 不幸にしたくない。
「マリー様…!あの、お気持ちは嬉しいのですが…
私はとっても困ります!」
マリーの顔が怖くて見れない。
悲しい顔をさせてしまうだろう。
凛はマリーを見ずに、一気に伝えた。
「嬉しいのに 困るの? (何で?)」
凛の言っている意味がわからない。
マリーは首を傾げる。
純粋な質問に凛は頭を抱える。
「マリー様…。よくお考え下さい。ロートン家の正統な血を引く御令嬢が、こんなどこともわからぬ血筋の人間と一緒になるなど、身分が違い過ぎます。」
「でも、お父様もお母様も喜んでくださいましたよ?」
凛は益々頭を抱える。
そこなんですよ!何故ロートン家の皆様は私なんかを
受け入れてくださるのか…!
マリーは凛の顔を覗き込む。
「私は凛の真っ直ぐな心が好きです。一生懸命に考えて悩んで、1つ1つに真剣に向き合う姿が好きです。
そして、優しくて…心を痛める。出来ることなら…私がその心の痛みを取りた除きいと思ってしまうのです。」
マリーの純粋でどこまでもきれいなその瞳に、凛の心が揺れる。
「今も…心を痛めてる…。 梨愛様を思い出すから?」
凛はマリーの言葉に涙を溢し 頷いた。
自分を想い、結婚していく梨愛を間近で見ていた苦しさを思い出す。それが全て…不幸の始まり…
マリーは凛をぎゅっと抱きしめる。
「大丈夫。それはもう過去の事よ。梨愛様と梨咲お姉様は全然違うわ。それは凛が1番知っている筈でしょう?」
凛は思い出す。
あの2人… 顔は似てる、雰囲気も似てるけど、
性格は全く似てない。
不器用で愛嬌の在るところは少し似ているが、
梨愛様はおっとりほんわかしていて、
梨咲様は冷静沈着。 たまに血の気が多い。(自分がそう育てた。)
「ふ…っ。 本当ですね…」
凛は笑いが込み上げてくる。
「お姉様、凛が居なくて寂しがっていましたよ?誰よりも近くで成長を見届けたんですもの。誰よりも喜んで欲しい筈ですわ…。一緒にお祝いしてあげましょう?」
マリーに言われると、凛は先程まで感じていたフラッシュバックへの恐怖心が無くなっていた。
コレは浄化(JOKER)の力なのだろうか…?
「マリー様といると心が落ち着きます。でも…私はマリー様の横に居るに相応しいとは思えないのです。マリー様にはもっと素敵な方が居ると思うのですが…。」
そう言いながらも凛が寂しそうな顔をするので、マリーは思わず笑ってしまった。
「凛の正直な気持ちはわかったわ。凛は私の傍に居ると落ち着くのね。私はとっても嬉しいわ。」
マリーの天使の様な微笑みに、凛は泣きたい気持ちになった。
こういう…梨愛様の笑顔を守りたかったのに…。
そして凛は迷う。
マリーの傍に居たい気持ちと、梨愛の様に不幸にしてしまうのではないかという不安。
「…許されるのでしょうか?」
「凛の正直な気持ちは誰にも迷惑を掛けないわ。寧ろ私はすごく嬉しいのですが…?」
マリーは凛を覗き込み、凛に満面の笑みで言って聞かせる。
凛はその笑顔に素直にならざるを得なくなった。
「マリー様の傍に…居たいです。マリー様が好きなんです。」
「私も…凛の傍に居たいの…。だって、凛が大好きなの。」
2人はふふっと笑い合うと
手を握り合い、教会へ歩き出した。




