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父の想い

支度を終えたルイスは意気揚々と花嫁控室へ向かう。 

と、向こうから花嫁の父、あがた長官が走って来た。

「あ、あがた長官…」

ルイスが声をかけるが、長官は聞こえていない様子。


何か… 様子がおかしいかも…


異変に気がついたルイスは、下を向いて突っ走ってきた長官に向って風の魔法を放つ。


魔法は長官の周りを取囲み、全速力の走りを減速させていく。


「?!」

長官は足が思うように前に出ない事に気がつき、初めてルイスの術中に嵌った事に気がついた。


「ルイス君…」

そう言うと長官は滝の様な涙を流した。


ルイスはぎょっとし、困惑する。

「どうしたんですか…?」


「おかしいだろう?今まで散々梨咲の気持ちを無視してきたのに、今更…普通の父子の関係を望みたくなるなんて。嫌われていて当然なのに…今更…笑って欲しいだなんて…。」


おいおい泣く梨咲の父の姿にルイスは驚いた。


いつも威圧的な態度を身に纏い、傲慢ささえ感じる振舞いを見せてきた男が、こんなに泣いている…?


「…あがた様は 梨咲さんが大切なんですね。」


ルイスも長官の前に座り込み話し出した。


「あの子の母親は自ら命を断った。母親の分までしっかり育ててあげたかったのに、国家間の思惑に利用される羽目になってしまった。全て…自分の力の無さが原因だ…。」


長官は胸ポケットからロケットペンダントを取り出し、ルイスに見せた。


ルイスは黙って受け取り、ペンダントを開いた。

中には写真が入っていた。


梨咲さんが…  赤ちゃんを抱いている ?


「今の梨咲にそっくりだろう? あの子の母親なんだ。」


ルイスは驚いた。似ているというか、梨咲そのものに思える。雰囲気や笑い方まで梨咲だった。


「梨咲の言った事は本当なんだ。花嫁姿を『本当は 見たくないんじゃないの?』って…

喜ばないんじゃなくて、梨愛ちゃんを思い出してしまうから喜べないかもと、心の中の数%は、そう警戒していたんだ。でも… 梨咲が幸せそうに笑って、写真を撮ろうなんて言うから…」


涙する長官にルイスは疑問だったことを聞く。

「長官は梨愛様を愛しているんですか?」


「…一般的な愛とは違うかもしれない。私達は政略結婚だったし、でも私は私なりに一生懸命に梨愛ちゃんを大切に思っていたし、梨愛ちゃんからの愛も確かに感じていた。まぁ、梨愛ちゃんの方が、心が正直で、演じきれなかったみたいだけど、それも全部、私の責任だから…。しわ寄せが全部梨咲にいってしまって…。今更ながらにすごい罪悪感を抱えて…酷い親だろう?」


長官の言葉にルイスは静かな怒りを覚えた。


「確かに、酷い父親です。罪悪感を抱えるなんて、しわ寄せだなんて。

梨咲さんは可哀想なんかじゃないですよ?いつだって母国と周りの事を考えて、自分の立場を理解して、一生懸命に生き抜いてきたんです。まずはそれを認めてあげて下さい。 ここから先は、俺が幸せにします。」


ルイスの言葉は長官の中に素直に入って、深く反省させられる。

「…。そうだよね。罪悪感なんて、可哀想だなんて思っていたら梨咲に怒られちゃうね…」


「梨咲さんの処へ行きましょう?お互いに思っていれば、関係はきっと修復出来ます。お手伝いくらいは出来るかも…。」


立ち上がったルイスは長官に手を差し伸べて微笑んだ。


「…ルイス君って超男前だよね…。惚れそうだよ…」


長官の言葉にルイスはスマイル0円で即座に反応した。

「すみません。梨咲さん以外はお断りです♡」



『…とう』

微かな声が聞こえてルイスは振り返った。



『ありがとう…』



ルイスは息を飲んだ。

梨咲にそっくりな女の人がにっこり微笑んでから、姿を消した。


「今の って…」


「ああ。 梨愛ちゃんだ。 喜んでくれているみたいで 良かったよ 」


長官はロケットペンダントを握りしめた。


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