梨愛
高校3年生はあっという間に過ぎていく。
みんな進路を見据えたテストや、高校生活最後のイベントを1つ1つ全力でこなしていく。
まるで卒業までのカウントを名残惜しむ様に…
しかしルイスは1人、みんなとは違う思いで日々を過ごしていた。
ああ… 卒業したら梨咲さんと結婚するんだ…
梨咲さんのウエディングドレスが楽しみ過ぎる!!!
幸せを噛み締めていた。
梨咲の左手薬指に嵌まる指輪を見ては浮かれる。
梨咲さんは先約済です♡ もうすぐ俺のモノです♪
ああ…どうしよう♡♡♡
「浮かれてますね…。」
ルイスの緩み放しの顔を見て、凛が呆れた。
「はぁ…! 凛には申し訳ないけど…俺、凄く幸せ♡」
「ふふっ。そうですか。良い事です。浮かれるのも良いですが、やるべき事もしっかりやって下さいね。」
「相変わらず鬼だな…!わかってるよ!」
ルイスがむくれた。
「結婚式は卒業式の翌日ですか…。随分急ぎましたね…。」
「早く梨咲さんをココから出してあげたいからね。それに…やる事が終わっちゃえば、後はイチャイチャし放題♪♪♪」
ルンルンなルイスを見て、凛は複雑な気持ちを抱える。
レスカーデンの東の森の展望台。
梨咲はふと傍らに優しい気配を感じた。
え…?
梨咲にそっくりな女性が梨咲の頭を撫でてにっこり微笑んだ。
『突然にごめんね? 今日は梨咲ちゃんにお願いがあって来たの…。 凛に 伝えて?』
レスカーデンの東の森の展望台
凛はひとりで来るのは初めてだった。
ココは梨咲様の憩いの場所。
お付き合いで何度も足を運んだ場所…。
凛が展望台に上がると 梨咲がいた。
「珍しいね…」
梨咲が凛に声を掛けてくる。
「…また何か お悩みですか?」
凛は梨咲を心配する。
「凛の方こそ。」
こんな場所に凛1人でくるなんて、思い詰めている証拠だ…と、梨咲は凛を心配する。
「私とお母様は…そっくりだもんね。」
梨咲は凛が自分を通じて母を見ている事に気がついていた。最近特に、ふと辛そうな顔を見せる事が多い。
凛は梨咲のその言葉に詰まった。
生き写し… です。
「自分でも途中からわからないのです。梨愛様の面影を梨咲様に見ていたのか、梨咲様が純粋に愛しかったのか…。或いは…両方…だったのかも…。
だから、1度冷静になる意味でも離れて良かったとは思っています。」
「戻ってきて、後悔してる?顔が…苦しそうだよ?」
「いいえ。後悔はしていません。梨咲様が気になっていたのは確かですし…。
ただ… 御婚礼が近づくにつれて、まるで…ループするような錯覚に陥ります。御成婚の年齢まで一緒だなんて…。」
自分だけが同じ時間を繰り返して…まるで1人だけ抜け出せない、異空間に閉じ込められている様だ…
と凛は感じていた。
「同じ様な場面に2度も出くわす。凛の運命に何の意味があるのかしらね?」
梨咲の言葉に凛は考える。
「意味…ですか。悪夢の始まりと終わり…だといいのですが…。」
「終わるよ。その証拠に、凛は猫じゃなくなった。」
それはマリー様が…
永遠に続くと思われた負のループを断ち切ってくださったから。
凛は心の中でマリーを想う。
まるで暗い世界に突如と現れた女神の様だった。
「マリーに会いたいでしょ…!」
ふと穏やかになった凛の顔を見て、梨咲は言い当てた。
「いえ、本当にそういう訳では…」
凛は慌てた。
何て身分不相応な事だ…! と。
「マリーなら凛を幸せにしてくれると思うな〜」
「私では… マリー様には不釣り合いです…」
「釣り合う釣り合わないじゃなくて、凛はマリーが好きじゃないの?」
「…。可愛らしい方だとは思います。一緒にいると、心が落ち着きます。どこか梨愛様を思い出します。」
「それって、辛いの?」
「いえ。懐かしく、温かく、穏やかな気持ちになります。」
梨咲は理不尽さを感じながら溜息をついた。
「そう…。私の見た目は辛くて、マリーの内面は安心するのね…!」
「簡単に言えばそういう事になるかもしれませんね…。」
「酷っ!(笑)」
梨咲のムッとした表情に凛は困った顔をした。
「さっきね、お母様に会ったよ。いい加減、凛に幸せになって貰いたいんだって。」
「…え…?」
凛は梨咲の傍らに寄り添う梨愛の姿を見た。
にっこりと微笑まれると、凛は涙を溢した。




