おかえり
ルイスは母国でのやるべき事を前倒しに片付け、予定より早くレスカーデンに戻ってきた。
梨咲さん、驚くかな? 喜ぶかな?
ウキウキしながら、とりあえず寮の自室に荷物を置きに行く。
部屋には凛がいて、ルイスを見ると驚いた顔で本から顔を上げた。
「ルイス様?! お帰り、早くないですか?!
…まさか、脱走なんて事…!」
「してない、してない! ちゃんと全部片付けて来たよ! ところで梨咲さんは?」
ルイスの質問に凛はドキッと飛び跳ねた。
「 … あー… ドコでしょうネ…? 」
明らかに変な返しの凛にルイスは怪訝な目を向ける。
と、その時
バキバキ バキ!!!!!! ガシャ〜ン!!!!!!
激しい音が寮の外からしてきた。
凛は冷や汗をかき、ルイスは急いで窓をあけて外を確認する。
一瞬だけ… 梨咲さんの気配を感じた…
あ、また! あれ… 消えた
ルイスの横を何かが通り過ぎ、部屋の中に入ってきた。
そうして部屋の中でガタガタと暴れ回る。
「?!」
ルイスは部屋の中を注視するが、スピードが早くて、なかなか目に負えない。
その間も梨咲の気配を感じたり消えたり
一体、何だ?
それから窓の外に「何か」が逃げた。
次の瞬間、その「何か」を追うモノを捕まえた。
「…っ! あ…っ!!」
梨咲は「何か」を取り逃がした事に気がつくと落胆し、同時にルイスの腕の中にいた事に気がつく。
「あ…あれ。ルイス?お帰り〜」
ルイスは梨咲の姿を見てぎょっとした。
顔や腕、至る所から切り傷で血を流し、服はボロボロに切れ、服にも血が滲んでいた。
髪の毛もぼさぼさで葉っぱや木の枝をくっつけている。
「な… えっ… ?」
状況が掴めないルイスは言葉を失う。
「あぁ〜!疲れた〜!手強い〜!」
梨咲はそのままパタンと床に倒れた。
凛は何とも言えない顔をしながら梨咲に近づき腰を落とした。
「ルイス様も帰ってきた事ですし、今日はもう終わりにしたらどうです?」
「嫌よ!捕まえるまでやるわ! …でも、 ちょっと休憩… 」
そう言うと、梨咲は目を瞑って意識を手放した。
「もぅ!言わんこっちゃない…!」
凛は顔を押さえて項垂れた。
「…何かまた、新しい事を始めたんだね?」
ルイスの言葉に凛はダラダラと汗を掻き、頷く。
「ルビ鳥を追いかけています。」
「はぁ…何でぇ?」
「スピード力強化の練習です。」
「 …。 」
ルビ鳥は体長5センチ程の小さな小鳥で、世界一飛行スピードが速い鳥だ。
小さくてスピードが早いので、まず目で確認することも難しく、まして捕まえるなんて事は困難を極める。
「…何でまたそんな事を始めたの?」
「梨咲様なりに考えたのでしょう。ルイス様と生きていく覚悟を決めた、とでも言えばわかりますか?」
「…。」
ルイスは梨咲を抱き上げるとベッドに寝かせた。
「さて、私は1時間くらい散歩をしてきます。
襲っちゃダメですよ?」
凛はルイスと梨咲の久しぶりの再会に気を遣いつつ、しっかり釘も刺した。
「…ちょっと、保証出来ないかも…。」
「じゃあ、散歩はやめますかね…」
「いやいや、行ってきてダイジョーブ!」
「…頼みますよ?」
凛は笑いながら部屋を出て行った。
凛が出ていき、ベッドで眠る梨咲に向き直ると、ルイスはその場に脱力した。
全く… 帰ってくるなり… 梨咲さん…
何やってるの~!!!!!!
それからベッドの脇に椅子を寄せて座る。
梨咲の 痛々しい傷の数々を見て心を痛める。
俺と生きていく覚悟を…?
何をそんなに焦っているの?
ルイスは梨咲の焦りを感じる。
見たこともない世界に対する、不安を感じる。
ルイスは梨咲にそっとキスをする。
「無理しないで? 梨咲さんは梨咲さんのままでいいんだよ…?」
ルイスは回復魔法をかけ、梨咲の傷を癒した。
梨咲は目を覚ますとハッと飛び起きた。
「ルビ鳥…!」
辺りを見回す。
「…もう、梨咲さん! ルビ鳥の前に、俺を見てよ!」
ベッドの隣に腰掛けていたルイスは手に持っていた本を閉じ、ベッドの上に移動してきた。
「…っ!///」
久しぶりのルイスに梨咲は何故か胸がドキドキと高鳴る。
ルイス 何だか大人っぽくなった ?
距離が近づいて、ルイスが手を伸ばす。
「ル…ルイス…っ///」
梨咲は堪らずに声をかける。
「? なあに?」
梨咲はドキドキが収まらない。
顔が真っ赤なのが自分でもわかった。
でも… 目が そらせないの…
「ふふっ。緊張してるの?
すぐに慣らしてあげるよ。」
ルイスの手が梨咲を引き寄せて、そっと抱きしめる。
髪の毛をふわふわと撫でられると心地よくて、梨咲は力が抜ける。
そうしてルイスの胸の鼓動を聞いていると安心する。
梨咲はルイスの背中に手を回して胸に擦りついた。
ルイスはその様をそっと微笑む。
ルイスの顔が近づいて そっとキスされると
全身が痺れる 心地よくて 安心する …
やっぱり ルイスのキスは 毒針の様だ…
「お… おかえりなさい… /// 」
「ただいま 梨咲さん 」




