長休み
アメリ事、美花とのやりとりをしている間に、2年生の前期はあっという間に過ぎた。
気がつけばもうすぐ長休みだった。
ルイスと凛と梨咲は昼食をカフェテリアで過ごしていた。
ふとルイスが珍しく溜息をついたので、梨咲は気になって理由を聞いてみる。
「長休みに梨咲さんを1人残して帰るのが気になって…。寂しい思いをされないかと…」
溜息の理由が自分だった事に梨咲は驚きつつも、気にかけてくれていることを素直に嬉しく感じた。
「ふふっ。ありがとう。慣れっこだし、大丈夫だよ!」
確かに少しは寂しいかも?
梨咲は気丈にお礼を言った。
「ルイス様、今回は私も残りますので大丈夫ですよ?」
突然の凛の居残り発言に梨咲とルイスは驚いた。
「えっ?凛、帰らないの?」
「マリーだって待ってるんじゃないの?」
「私はロートン局長殿から梨咲様の花嫁修業を命じられていますので…」
梨咲とルイスは「花嫁」という言葉に反応し、顔を赤くして、お互いを見た。
『 花嫁修業…? /// 』
「はい。ルイス様が未来のロートン家の為にやるべき事があるように、梨咲様にもお勉強して頂かなければなりません。」
「そうなんダ…///」
梨咲は照れつつも、不安を感じた。
務まるのかな?大丈夫かな?と緊張する。
そんな梨咲の思いをルイスと凛は俊敏に感じ取った。
「梨咲様、そんなに難しい事ではありません。大丈夫ですよ。ここ(レスカーデン)を出た後、梨咲様が困らない様にと、ロートン局長殿からのご配慮なのです。気軽な気持ちでいて下さい。」
凛の言葉に梨咲は少し安心した。
「梨咲さん、無理しないで。ココを出た後は…何があっても俺が守るから!」
ルイスが手を握って来たので梨咲は思わずルイスを見た。
強い気持ちの籠もった青い瞳にドキッとする。
本気で守ろうとしてくれているのが、その強い視線からわかる。
ありとあらゆるモノから、私の不自由を取り除く為の努力をしようとしてくれているのね。
その為に今回、帰省するのね…。
じゃあ、私も頑張らなくちゃ。
守られるだけは、性に合わないの…。
「ふふっ。ルイスの気持ちはいつも嬉しいよ?私も頑張るね?」
梨咲の微笑みにルイスはクラッときた。
「ヤバい!凛が居なかったら襲いたい…!」
ルイスの恍惚とした表情に、梨咲は慌てて握っていた手を引っ込めた。
「/// …凛が居て良カッタ…!」
「/// 本当に…。 油断も隙もない…。」
凛も頭を押さえて溜息をついた。
そうしてルイスは帰省して行った。
「梨咲様から離れたくない!とか駄々を捏ねずに帰ってくれて良かった…!」
凛は心底安心した様子で汗を拭った。
一悶着あったのかな?と想像して梨咲は凛を気の毒に思った。
確かにいつものルイスから考えると、実にあっさり、さっぱりとしたお別れだった。
梨咲の方が ちょっと寂しく感じていた。
梨咲は一瞬だけしゅんとして、それから両頬を叩いて気持を入れ替える。
「気軽な気持ちで…とは言いましたが、昨今の国際情勢はあまり穏やかではありません。梨咲様にはその世界の把握とロートン家の役割、梨咲様の務めをお話します。」
こうして凛の講義がスタートした。
大きな国が権力で小さな国を支配しようとする。
小さな国は知恵を絞って同盟を組み、その支配から抵抗する。
国際魔法局(ルイス達)はその中間に入り、大きな国を宥め、小さな国を保護する。
梨咲の母国は元々は小さな国だが、圧倒的な軍事力をちらつかせ、ある程度の大きな国になってきている。
このレスカーデンがある、今梨咲がいる国は、元々とても大きくて、軍事力もあるが、梨咲の母国の軍事力には敵わず、怯えている状態だ。そのため経済を活発に提供し、ゴマをする状態。しかし他国の、特に小国には威圧的で、国際的には度々問題を起こす困った大国、と認識されている。
梨咲は友好の証としてこの国に差し出され、梨咲が卒業する頃には円滑な友好国となる事を両国が約束していた。
だがそこに、その差し出した娘(梨咲)が思いの他、強大な知識と魔力を備えてしまった為、各国が梨咲の叡智を狙う様な形になってきている。
その証拠にディランは梨咲を手に入れたがり、ネファも粟よくば…といった思いで梨咲に近づいてきた。
梨咲の父は各国に梨咲を都合良く操作されない様、中立な立場を守る国際魔法局に嫁がす事を考えついた。
「…簡単に言うと、そういう流れです。」
「私、知らぬ間に有名人?」
凛の話を聞きながら、梨咲は不思議な気分になる。
「梨咲様の能力は高く注目されています。実際に各国に赴くとよくわかります。国際魔法局は英梨咲の能力を活かせるのか?好奇な目で世界が注目しています。今頃ルイス様も嫌というほど味わっている頃でしょう。梨咲様にはその事も踏まえて、ココ(レスカーデン)を出た後の事を考えて頂きたいのです。」




