今だけ…
男子寮のルイスと同居する部屋ー
凛は時計を睨みながら青筋を立てていた。
遅い !!! ルイス様め… 1時間と言ったのに…!
それから凛は部屋の中を右に左に動き回って考えを巡らせる。
梨咲様の部屋に乗り込むか…?
でもっ… もし 万が一…
お2人が盛り上がっていたら、どうしよう?!!
凛は両頬に手を当て、口を縦に開き、声を出さずに絶叫した。それから前のめりに膝をついて崩れる。
立ち直れない…!
いくら梨咲様への思いが過去のモノと割り切っていても… きっと…受け止めきれない…!
あんなに一緒に過ごしてきた梨咲様が…
あられも無い姿になっていたら、どうしよう?!
「…凛?」
1人で暴れていると、突然背中から声がした。
振り返ると梨咲と、足元にはルイスが座り込んでいた。
「り…梨咲様…!ご無事でしたか…!」
凛は涙を流し、梨咲に走り寄る。
「え…?どうしたの…。涙…?」
梨咲は凛の涙にぎょっとして、心配する。
「もしやルイス様に襲われてやいまいかと、心配しておりました。」
「は…?/// そんな事、させないわよ!変な事、言わないでよ! ///
それこそ背負い投げなんかじゃ済まないくらいに八つ裂きにするわ…!」
梨咲は顔を真っ赤にして、凛に怒った。
「ルイスが寝ちゃったから連れて来たわ…!」
「それはわざわざ…、ご苦労様です。」
梨咲はルイスのベッドの位置を確認すると、浮遊術を使ってルイスをベッドに移動させて寝かせた。
「大したコントロールですね…!しかも魔法陣まで、いとも簡単に操れる様になって…!頑張ったんですね。」
梨咲は凛の言葉に肩を揺らした。
そうだよ…。凛が居なくなってからも、自分を律して頑張ってきたよ。
いつ凛に見られても恥ずかしくないように
「梨咲様、凄い!頑張りましたね!」って褒めて貰える様に。
凛の居ない1人の時間を埋めるのは…とても大変だったよ…。
ルイスが居なかったら…
「…っ!」
梨咲は堪え切れずに涙を流した。
寂しかったよ…。
また会えたね…
凛を見てぽろぽろと涙を流す。
凛は梨咲の涙に動揺した。
数々の時間を一緒に過ごしてきた凛には、何で梨咲が泣いているのかなんてすぐにわかってしまう。
『寂しかったよ…?』
「…っ !」
私は、あの時(猫)と違って、今はちゃんとした身体がある。
『寂しいと泣く貴女を抱きしめて、 いくらでも愛を注げる…』
だけど…
凛は躊躇いながら梨咲に手を伸ばす。
頭の上にふわ…っと手を置き、慰める。
今までだったら 冷たく
『そんな事で泣いてどうするんです!さ、次の事をやりますよ?』と言ってその場を誤魔化していた。
慰めてあげたい本心に蓋をして、梨咲様にも、無理をさせてきた。
今は何1つ、そんな事をしなくてもいい。
だけど…
抱きしめてはならない。
だって、貴女はルイス様の婚約者。
いくら慰めてあげたくても それは… してはいけない。
涙目で見上げてくる梨咲に、凛は耐えられ無くなった。
だって梨愛様にも見えてくるから…。
凛が梨咲を抱きしめると梨咲も凛を抱きしめた。
ルイス様、…マリー様 ごめんなさい。
今だけです…。
凛は心の中で謝罪する。
ルイスはベッドで寝たふりをしながら、その様子を複雑な気持ちで見届けた。




